親ガチャのアタリかハズレかということは分かりにくい

ここで一つ問題が生じます。いったいどこまでが親ガチャのハズレガチャに相当するのかということです。恐らくほとんどのみなさんは、「自分がハズレガチャに相当するかどうか」が分からないのではないでしょうか。「ヤングケアラー」と呼ばれている子どもたちは、自身にその自覚がないことが多いということが厚生労働省などの調査で明らかになりましたが、第三者から見るとハズレガチャなのに、本人がそれに気づいていないことも多いのです。

そこで、まずは自分が親ガチャのハズレガチャに相当するかどうかを知るところから始めたいと思います。これまでの研究を基に、8名のモデルケースを作成しました。3回連続記事で8名のケースを紹介しますので、誰がハズレガチャに当たるのか、ハズレガチャだとするとどこがハズレなのかを考えてみましょう。

モデルケース1、ヤングケアラーになっている小4のタケシ

タケシは大阪市内に住む小学4年生です。両親はコンビニエンスストアを経営。経営者とはいえ、コンビニチェーンのオーナーにはほぼ休みがなく、薄利で生活はけっして楽ではありません。

タケシには中学2年生になる兄と小学1年生の妹がいます。兄は小学生の頃から勉強が得意で、私立の中学校に通っています。

タケシは勉強が得意ではありません。じっと机に向かって決められたことを覚えるのが好きではないのです。しかし、家事は小学生とは思えないくらいこなしています。ただし、これも好きでやっているわけではありません。タケシが小学生になった頃から兄が塾に通い始め、塾への送迎などで両親は兄につきっきりで、加えて、24時間体制のコンビニの仕事もあるので、当然のなりゆきのように、タケシは低学年の頃から掃除や洗濯、妹の世話などを「させられて」きたために、家事や気遣いのスキルが身についてしまったのです。

タケシはスポーツも得意ではありません。ですが、野球と阪神タイガースは好きで、テレビで応援をしたりしています。いつか、甲子園球場に試合を見に行きたいと思っています。野球だったらやってみたいなと思っていますが、親の付き添いが必要なリトルリーグに入るのは、どうせ無理だろうと思っています。

友達関係はどうでしょうか。休み時間に他の子とドッジボールをしますが、クラスで仲間はずれになりたくないからやっているだけで、特に仲のよい友達もいません。どちらかというと引っ込み思案のタケシは、そういった輪の中に入っていくことができません。