「ものわかりのいい高齢者」を装うのはやめよう

“ささやかなこと”に幸せを感じられるようにしたいと言いつつも、だからといって必要以上に丸くならないようにしてほしいものです。

「もう70を過ぎたんだから、若い人に合わせなくちゃ」「世の中のトレンドなんだから、受け入れなくちゃ」などと、ものわかりのいい高齢者を装う必要はありません。

むしろ少しぐらい頑固でもいいから、自分が長く生きて考えてきたことや、経験を通じて培ってきたものを伝えるぐらいの気持ちになったほうが、高齢になっても自然な生き方ができる気がします。

「年寄りの昔話は嫌われる」は本当か

たとえば50代、60代の現役のころは、若い世代に自分の経験を話しても冷淡な反応しか返ってこなかったかもしれません。「そんな昔話は聞きたくない」「いまはもう、そういう時代じゃない」……といった反感も察してきました。

それがわかっているから、「年寄りの昔話は嫌われる」と、ついつい思い込んでしまいます。

現役を退いた70代が何か言ったところで、相手にされない可能性はたしかにあります。「そんな考え、もう古いですよ」「いまの世の中には通用しませんよ」と否定されるかもしれません。

でも私は、どんなに高齢の方であっても、その人がポツンと漏らしたひと言に「なるほどなあ」「そのとおりかもしれないなあ」と感服することがよくありました。言われたときはすぐにピンとこなくても、自分自身が年を重ねることで、「そういう意味だったのか」とうなずいてしまうこともありました。