夫婦2人の手取り額32万円から住宅ローンの返済も

奥さんの仕事はケアドライバーで、病院の患者送迎車の運転とサポートをしている。

「足腰の弱った高齢者、車イスを使っている人、松葉杖を使っている人などの家へ迎えに行き、治療や処置、リハビリが終わったら送っていく。病院内では移動の手伝いやトイレの世話なども受け持っているそうです。特に資格が必要ということじゃないらしい」

雇用形態はパートで勤務時間は8時30分~13時、14時~18時30分の2部制。時給は1100円ということだ。

「出勤日はシフト制で週4日。なので月収は7万5000円ぐらいですが、我が家にとっては貴重な収入だから感謝しています」

夫婦2人の手取り額を合計すると32万円ほどになるが、生活は楽ではない。最大の出費は住宅ローンの返済。

「一戸建てですが郊外の中古で、買ったのがリーマンショック後の不動産価格が下がったときだったから格安でした。頭金も多く入れられたので毎月の返済額は6万円です。家賃並みだけどあと12年払い続けないといけませんから」

固定資産税も年間7万円ぐらい課税されるので、持ち家であっても安心できない。

「子どもは上の娘が高2で下の息子が中1。これから教育費がかかるわけだから、もっと稼ぎたいんですよ。娘は敏感な子で、パパ、うちは大丈夫なの? 進学してもいいの? って聞いてきたんです。親としては子どもにそんな不安を抱かせてしまって情けなかった」

「社会が落ち着いたらまた店を再開したい」

こういう事情なので、本業が休みの日に日払い仕事をやってみたこともあったが、次の日はつらくて起きるのが大変だった。

「これじゃ過労死しちゃうと思って副業はやめました。今は無駄遣いしないことを第一にしています」

増田明利『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)

自家用車は維持費が大きいので売却し、今は家族全員が自転車を使っている。それも電動自転車ではなくホームセンターで買った中国製の特価品。これを家族4人で使い回している。

「正月早々にテレビが壊れちゃいましてね、買い換えたのですが、買ったのは同じインチ数でシャープや東芝より1万5000円も安かったフナイ製のものです。テレビなんて映ればいいんですよ、画質がどうとか言っていられませんから」

プリンターのインクはリサイクル品、乾電池は100円ショップで、晩酌の缶チューハイやカップ麺はまいばすけっとで買うのが定番。1円だって浮かせたい。

「早くコロナが収束してくれないかな……。社会が落ち着いたらまた店を再開したい、そう願っています」

それまでは我慢するだけ。そのうちいいことがあると思うしかない。

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