出生数は激減し、死亡者数は激増している
さて、昨今は「異次元の少子化対策」という今年の流行語大賞になりそうな言葉に反応して、出生率や総人口のことばかりが話題になっていますが、それと同等に今後の日本において重要な指標についてはあまり注目されません。
今月冒頭に、厚労省から2022年の人口動態調査の年間概数値が発表されています(概数なので確定値ではありません)。そこでも出生数が77万台に落ち込んだことばかり注目されましたが、実はもっと深刻な数字があります。
2022年の年間死亡者数が156万8961人と150万人を突破したのです。
これは、統計の残らない太平洋戦争中の1944~1946年を別とすれば、明治維新以降の統計の中で最高記録となります。今までの最高記録はスペイン風邪の流行などによって149万人が死亡した1918年でした。実に、100年以上ぶりに死亡者数の記録が塗り替えられたわけですが、ほとんどのニュースで取り上げられていません。
勘違いしないでいただきたいのは、2022年に死亡者が増えたのはコロナによるものではありません。死亡原因で増えているのは老衰です。
「少死50年時代」から「多死50年時代」へ
世界一の長寿国家の日本とはいえ、人間は不老不死ではありません。必ずどこかで死を迎えます。むしろ、日本は1950年代から2000年にかけての50年間、世界でもまれに見る「少死国家」でした。日本の高齢化率が他国をごぼう抜きにして世界一になったのもこの期間中です。高齢者が、死なずに長生きしたからこそ、この超高齢国家となったわけです。
しかし、そうした長寿も永遠ではありません。今後、年間死亡者数が150万~160万人以上続く時代が50年以上続きます。「少死50年時代」から「多死50年時代」になるのです。
ちなみに、社人研の前回2017年4月での死亡中位推計では、死亡者が年間150万人を超えるのは2024年となっていましたが、実際はそれよりも2年早く到達したことになります。2022年は、「日本の多死時代元年」となります。
以下の、明治時代から令和にかけての出生数と死亡数の長期推移のグラフをご覧いただければ一目瞭然ですが、2000年代中盤までは出生数が死亡数を上回る状況が長らく続き、これが明治以降の日本の人口増加を実現させてきました。