短期的に移民を導入しても人口減少は止まらない
注目すべきは、双方の分布の仕方の共通経年変化です。世界も日本も、「多産多死」「少産少死」期においては、国や地域によって死亡率も出生率もバラけていましたが、「少産多死」期(青色)においては、出生率のバラつきはほとんどなく、高齢比率の高い地域から順番に多死化が進行していくということです。
国別にみれば、日本などがいち早く「多死国家」となっていますが、やがて人口の多い中国もそうなるでしょう。国内の都道府県別に見れば、高齢化率の高い秋田や青森などの地方から「多死化」が始まります。
全世界がこの「少産多死」ステージに必ず到達するわけですから、短期的に移民を導入したとしても、結局将来的にはすべての国が人口減少になるわけです。
今後は孤独死、介護、空き家問題が急増する
加えて、「多死化」は同時に「ソロ社会化」を生みます。2020年の国勢調査時点で、日本の単身世帯は約2100万世帯を超えて、全世帯のほぼ4割近くになっています。単身世帯というと若い独身男女が多いというイメージを持つかもしれませんが、実際は単身世帯のうちの32%、約670万世帯が65歳以上の高齢ソロ世帯です。2040年には、単身世帯の45%、約900万人が高齢ソロ世帯となる見込みです。
あわせて、高齢ソロ世帯予備群でもある「高齢の夫婦のみ世帯」も増えています。こちらも2020年で約670万世帯です。夫婦のどちらか一方がやがて死亡した段階で、これらがすべて高齢ソロ世帯と差し替わります。こうした高齢ソロ社会化は、孤独死や介護の問題、さらには空き家増加の問題をも内包しています。
述べてきた通り、今後50年間は、多死化とソロ社会化が訪れるのは間違いないわけで、それは小手先の少子化対策でお茶を濁しても何も解決されません。今後50年間の不可避な人口動態をふまえ、人口減少する前提、高齢者比率が高まる前提での抜本的な国の運営の在り方が議論されることを望みます。