組合のリーダーは中国人女性

国籍や人となりなど関係ない。どんどんよそ者を受け入れる。それが成果にもつながっている。大須商店街連盟の事業部長を務める廣田尚彦さん(59)は、大須の外からやってきたアメカジショップの経営者だ。最初は路面店からスタートし、1993年にアーケードのある大須観音通に移転した。そこから商店街の活動にのめり込み、今では祭りの実行委員長を任されるなどの活躍を見せている。

もう一人、万松寺通商店街振興組合の理事長を務めているのは、中国人の女性だ。以前は店舗スタッフとして大須商店街で働いていたが、自分の店を持ちたいという夢を叶えてオーナーに。そして、今では中核メンバーとして街のために汗をかいている。

オープンに門戸を開くことで人が集まる。そしてその人たちが活躍する。これが大須商店街の本質だろう。「大須ドリーム」という言葉があって、この街は自分の夢をつかむためにやってくる場所なのだと堀田さんは言う。大須発の企業で有名なのは、中古品販売大手のコメ兵ホールディングスだが、同社も最初は「米兵商店」というわずか5坪の小さな古着屋としてスタートした。それが今では売上高700億円を超える大企業にまで成長した。

筆者撮影
コメ兵の本店

「大須で商売をする人たちは、一人一人が頑張るから、それが大須全体の力になっています」と堀田さんは力を込める。

「もうあの頃に戻りたくない」という危機感

最後のポイントは、自前主義であること。年間100件を超えるイベントをこなしているが、基本的には外部業者に頼らずに、商店街の人たちやボランティアなどで運営する。そうすることで各人の関わり合いが一層強くなり、一体感も高まるからだ。

ただし、現実的には人手が不足しているのは事実である。

「各通りの組合員がきちんと役割分担をして、イベントを回してくれています。でも、今が過渡期。通りの役員が少なくなって、毎回同じ人がやっているところもあります。『ワシら、もう年寄りだから勘弁してくれ』と言い出している最中です」

それでもやってくれとは強要しない。あくまでも、できる人ができることをやればいいと考えている。他方で、堀田さんたちがやり続けるのは地元としての使命感が強いからだ。

「商店街の活動を強制することはできないですよね。結局、大須に対する愛着があるかどうか。あとは、携わっている人たちの使命感ですよ。例えば、毎月28日に行っている餅つきなんて長年やってきたわけだから、これから先もずっと続けていくことが我々の役目だと思っています」