この間、皇室をお守りすべき宮内庁は、十分な対応をしていなかった。宮内庁の落ち度としては、メディア対応のまずさに加えて、皇后陛下のご体調について冷淡な態度を取った時期がしばらく続いた事実を挙げられる。

そうした中で、皇后陛下の最大にしてほとんど唯一の庇護者は、他ならぬ天皇陛下だった。天皇陛下は、国事行為やその他のさまざまなご公務に全身全霊で取り組まれながら、一方では皇后陛下、さらに両陛下の間にお生まれになった敬宮としのみや(愛子内親王)殿下を全力でお守りになった。

その天皇陛下の長くおつらいご努力の上に、現在のご一家のお幸せな輝くようなお姿がある。

愛子さま「プロポーズ再現を」

5月30日、天皇・皇后両陛下と敬宮殿下はおそろいで、東京・日本橋高島屋で開催された「御即位5年・御成婚30年記念特別展 新しい時代とともに――天皇皇后両陛下の歩み」(主催・毎日新聞社、特別協力・宮内庁侍従職)にお出ましになった。

この時、ご婚約内定の記者会見で皇后陛下がお召しになっていた黄色いワンピースも展示されていた。ご鑑賞後の関係者とのご懇談の中で、主催者側の女性がそれに触れて、「プロポーズの当時のお言葉が思い浮かびます」とお伝えした。言うまでもなく、記者会見の席で皇后陛下から紹介された「雅子さんのことは僕が一生全力でお守りしますから」という天皇陛下のお言葉だ。その女性にとっても感銘深いお言葉だったのだろう。

するととっさに、敬宮殿下から楽しいリクエストが飛び出したという。「(それを)再現してみて」と冗談めかしておっしゃったというのだ。

これには、陛下もさすがに少し困られたのではないだろうか。何とも微笑ましい、ご家族の仲睦まじさが伝わるエピソードだ。

天皇陛下はプロポーズの時のお約束を、その後の長く苦しい歳月にあって、ご誠実に守り通してこられた。おそらく敬宮殿下のお心の中には、そのような父親への信頼と尊敬のお気持ちがおありなのだろう。そのお気持ちが、この時の少しおどけたリクエストとして、表現されたのではないだろうか。

写真=時事通信フォト
即位5年・成婚30年記念特別展「新しい時代とともに 天皇皇后両陛下の歩み」を訪れ、1993年の結婚パレードで使われたオープンカーを見られる天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=2023年5月30日、東京都中央区の日本橋高島屋[代表撮影]

令和流は“ご家族そろって”

平成時代は、昭和時代以上に“両陛下がご一緒に”ご公務に携わられた印象が強い。令和の場合、さらに“ご家族そろって”というお姿がより鮮明になっている気がする。

皇后のお務めとされてきた宮中でのご養蚕にも、異例ながら“ご家族総出”で取り組まれている(拙稿「天皇陛下も愛子さまも参加…異例の養蚕が『女性天皇即位への布石』といえるワケ」プレジデントオンライン令和4年[2022年]6月24日公開を参照)。