誰でも罹る、若くても罹る

認知症の中でも、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などは男性に多い傾向があります。逆に、アルツハイマー病は女性のほうが男性より2.5倍も多いことがわかっています。

そこには、ホルモンのはたらきが関わっています。

エストロゲンという女性ホルモンは、あらゆる病気から女性を守っています。閉経前の女性に心筋梗塞など血管性疾患が少ないのも、エストロゲンのおかげです。エストロゲンは、脳にも良いはたらきをしてアルツハイマー病の予防に役立っています。

ところが、閉経するとエストロゲンの分泌がなくなってしまうため、アルツハイマー病のリスクが高まってしまうのです。

一方、男性はどうでしょう。男性ホルモンであるテストステロンが、アロマターゼという酵素によってエストロゲンに換えられる仕組みが男性の身体には備わっています。

そして、男性の場合、年齢とともにテストステロンの分泌は減ってくるものの、すっかりなくなったりはしないので、エストロゲンもそれなりにつくられます。

女性も、閉経後しばらくは副腎から男性ホルモンのテストステロンがわずかに分泌され、それによりエストロゲンをつくることができてはいます。しかし、70歳を迎える頃には、テストステロンの分泌もなくなってしまいます。

こうしたことから、アルツハイマー病は女性が多いのです。

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とはいえ、男性のアルツハイマー病患者もたくさんいるので、ゆめゆめ油断してはいけません。とくに、糖尿病を患っていたり、その予備軍であるなら要注意です。

また、若いからといって安心はできません。

最初に発見されたドイツの患者さんはまだ51歳でした。現在、65歳以下で発症した認知症は「若年性認知症」と呼ばれ、日本には約3万6700人の患者がいると推計されています。そのうち、「若年性アルツハイマー病」が52.6%と半分以上を占めています。

若年性アルツハイマー病は、20代で発症する例もあり、患者の多くが40~50代の働き盛りです。アルツハイマー病について、自分は例外だと油断していられる人などいないのです。