無印良品の製品は好きだけど…
一方、無印良品の生活雑貨も都市の若者を中心に強い人気がある。ところが、業績は厳しい。無印良品は中国に2005年に進出し、現在は349店舗を展開しているが、既存店売り上げは伸び悩んでいる。
理由は大きくふたつある。
ひとつめは値段だ。無印良品も日本とほぼ同じ商品を販売しているが、日本より割高の価格設定になっている。
ユニクロの商品は季節性が強いためにシーズンが過ぎると値下げをするが、生活雑貨中心の無印良品の商品はセール時期に割引がされることになる。このため、ビッグセールの直前になると、SNSでは「MUJI割引攻略」という記事が大量に登場する。
つまり、「無印良品の製品は好きだけど、セールの時に買うもの」になってしまっているのだ。無印良品の運営企業である良品計画も、年報で中国市場について「近年は業績拡大のペースが鈍化していると認識しています。これは、日常的に商品を購入するには価格がやや高いとの認知」と述べている。
中国の「パクリ企業」に追い越される
この「セールの時に買う」という状況を解消できない間に、強力なライバルが成長してしまった。無印良品不振の理由ふたつ目がメイソウ(名創優品)の登場だ。
商品はダイソー風の生活雑貨を並べ、店舗は無印良品風、店舗ロゴはユニクロ風と、中国のパクリ企業の典型として日本のメディアで面白おかしく取りあげられていた雑貨チェーンだ。
しかし、2022年末には中国に3378店舗を展開し、無印良品の10倍近い規模になっている。米国証券取引委員会(SEC)に提出している報告書によれば、中国市場での営業収入は2022年で74.42億元(約1440億円)と、無印良品の中国市場での営業収入866.4億円を大きく超える。もはや無印良品が追いかける立場になっている。
製品は無印良品と比べるのが失礼なほど品質に差がある。しかし、この5年ほどで急速に品質を上げてきていて、使って支障が生じるほどひどい品質の商品というのはなくなっている。また、知的財産権の問題を起こしながらも、高級ブランドの要素を取り入れた商品を販売している。日系元素の要素が入った無印良品風の生活雑貨も人気だ。
最近では、多くの人が無印良品に行く前にメイソウに寄るようになっている。品質が無印良品に劣ることはわかっても価格が3分の1、4分の1の同類の商品が並んでいる。価格が安いためにお試しで買ってみると、使って問題が起きることはない。「だったら、メイソウでもいいのでは?」と考える人が増えているのだ。
また、近年は地方都市でも大都市の若者のライフスタイルが広がり始めている。そういう人たちにとって、無印良品の店舗は近くにないが、メイソウの店舗は近くにある。無印良品は、都市部の既存客だけでなく、地方の将来の顧客もメイソウに奪われてしまっている。