EUでも「欧州一般データ保護規則」違反で訴えられた

あまりに杭が出過ぎたから狙い撃ちされた、といったら言い過ぎかもしれませんが、実はグーグルに限らずGAFAMは、その利益やユーザー数、蓄積されているデータ量などによって、世界中でさまざまな問題を引き起こしています。

グーグルが訴えられたのはこれが初めてではなく、20年にも独占禁止法違反の疑いがあるとして司法省から提訴されています。

このとき問題になったのは、アップルの標準ブラウザであるサファリ(Safari)のデフォルト検索エンジンに、グーグルを設定するよう多額の資金を支払ったというものです。

グーグルが訴えられたのは、米国内だけではありません。19年には欧州連合(EU)から5千万ユーロの罰金を科せられています。これは、EUの一般データ保護規制(GDPR)に違反したためです。

EUのGDPR(GeneralDataProtectionRegulation)というのは、「欧州一般データ保護規則」という規制で、EU加盟28カ国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの3カ国を含む欧州経済領域で18年に施行された規制です(図表5)。EU内のすべての個人情報のデータ保護を強化し、EU外への個人情報の輸出を規制しています。

21年7月には、アマゾンもこのGDPRに違反したとして、当時の日本円に換算すると約970億円もの罰金を科せられています。

裁判の行方によっては活動が制限される可能性も…

GDPRの規制は、施行当初からGAFAMのような巨大IT企業を狙い撃ちしたものだと、まことしやかにささやかれていました。考えるまでもなくビッグ・テック、あるいはGAFAMは、いずれもアメリカでスタートした企業であり、米国内にとどまることなくグローバル化しました。その結果、世界中からユーザーを獲得し、全世界をマーケットとして利益を上げています。

田中道昭『GAFAM+テスラ 帝国の存亡』(翔泳社)

GAFAMの中に、あるいはビッグ・テックの中に、EU発祥の企業が1社でも入っていれば、GDPRももう少し穏やかなものになっていたかもしれません。本来自分たちが得られるはずのユーザー情報や利益が、アメリカ発祥の企業に根こそぎ持っていかれているという現状に、大きな危機感を持ったのでしょう。

ちなみに、22年11月には大手システムインテグレーション企業のNTTデータのスペイン子会社が、取引先の顧客情報漏えいに対する過失があったとして、GDPR違反で約6万4000ユーロ(約940万円)の制裁金が科されています。

今回の米司法省によるグーグルの提訴は、その訴状を見るとバージニア州、カルフォルニア洲、コロラド州など8つの州も加わっています。裁判によっては、今後のグーグル活動にも影響が出てくるかもしれません。

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