夫婦のあり方も変わっていく

「夫婦」に関するマインドリセットも重要です。

熟年離婚という言葉を耳にします。熟年といっても、最近は「高齢離婚」といったほうが実情に合っているように私には思えます。40~50代より、たとえば夫が定年退職になってとか、年金をもらい始めてから離婚する方が多いように感じるからです。

理由としてはいくつかありますが、まず、法律が変わって、離婚後に夫婦で年金が分割されるようになったことがあります。いまは厚生年金+基礎年金の半分の金額をもらえるようになり、離婚した妻でもある程度生活を維持できるようになりました。

財産分与もわりと認められることが多いようで、持ち家を売って財産を2分割にするようなことも可能になりました。

さらに昔と比べ、60代を越えた女性でも働くことができる場も増えています。

こうした社会の変化によって、女性が離婚したあとでも食べていけるようになり、「嫌なものをいつまでもがまんする必要はないよね……」という考え方に世の中が変わってきています。

「つかず離れず婚」のすすめ

夫の定年後、子どもは独立し、夫婦2人の生活が始まります。それまでは互いに仕事や友人関係、趣味などで、一部を共有するだけだったのが、急に一日中、常時顔を合わせる状態になるなどして、多くの場合、女性のほうが先に音を上げます。

その結果、熟年離婚に至るケースがたくさんあります。それぞれに言い分はあるとして、結局は「一日中一緒にいる」という状態があまりよくないのです。

私もいくつかの著書に書いているのですが、これにはまず、「つかず離れず婚」をおすすめしたい。

一日中一緒にいれば、どんな相手でも欠点やあらが見えてきますし、嫌になってしまいがち。ですから、つかず離れず、意図的に一緒にいる時間を減らすことで、夫婦関係をよくするという考え方です。

わりと、それでうまくいっている家庭は多いですし、場合によっては、その先に、離婚をせずに「別居する」という選択肢を採る夫婦もあるようです。

後半生に差し掛かったら、夫婦というものをもう一度考え直してみる。こうしたマインドリセットも大事だと思います。

年をとったら「with」を生きる

老年医療に長年携わってきた医師として、私がみなさんにぜひマインドリセットしてほしいと考えているのは、「病気」についてです。

日本人はまじめすぎるのか、健康診断の検査データでちょっとした異常値があると、その全部を「正常値にしないといけない」と思い込んでしまうところがあります。あるいは、何かしらの病気が見つかったら、「直ちに治さないといけない」と考えてしまいます。