※本稿は、遠藤健司『急増する「首下がり症」どう防ぐ、どう治す』(ワニ・プラス)の一部を再編集したものです。
初期の段階だと本人も異変に気づいていない
首下がり症候群とは、頭が上がらず前を向けない状態になってしまうことを指します。最初のうちは頭が重い、上がりにくい、あるいは首のあたりがつっぱった感じになるといった症状ですが、次第に頭がどんどん上がらなくなり、ついには完全に下を向いた状態になり、自分の手であごを押し上げない限り、頭を上げることができなくなってしまいます。
これを、あごが胸にくっついた姿勢になってしまうため、「chin on chest(チン・オン・チェスト)変形」と呼びます。また、少しの時間ならば首を持ち上げることは可能だが、前を見続けることが難しくなることから「姿勢維持困難症」と言うことができます。
高齢者に多く見られる症状なのですが、初期の段階だと本人も異変に気づいていないことがよくあります。「年だから」とか「疲れているから」などと考えてしまうせいかもしれませんが、「頭が重く感じる」「首につっぱり感がある」くらいの自覚症状で、まさか頭が上がらなくなってしまうとは想像できないからでしょう。
本人や家族が気づいたときにはもう遅い
それに、日常生活の中で自分がどこを見て歩いているか、意識している人はほとんどいないと思います。無意識のうちに視線を定めていて、目の動きだけでも30度まで上を見ることができるので、「以前より下を向いて歩くようになった」ことを、なかなか自覚しづらいのです。
その結果、首が下がりきった状態になって初めて、家族や本人が首下がり症候群になっていることに気づく、というケースが多いのが現状です。
なかにはまだ初期の段階で「最近首が下がっていない?」と家族に指摘されたという患者さんもいらっしゃいます。ところが、そう指摘されてもあまり深刻に捉えず、受診の機会を逃してしまった、と言う患者さんもいるのです。