G7は「課題ごとのパートナーシップ」を重視

今回のサミットで発出されたG7広島首脳コミュニケでは、「パートナーシップ」という言葉が繰り返されている。経済安全保障、食料安全保障、エネルギー等のさまざまな議題において、繰り返し「パートナー」との連携がうたわれる。

ここで「パートナー」として想定されているのは、まさに個別の問題領域ごとにG7と協働してくれる、諸国や国際機関のことだ。どの国や機関と協働するか、どこに力を入れるかは、それぞれの問題領域によって都度変わるだろう。

それぞれの分野ごとに戦略的な目標を達成するため「パートナーシップ」を結んでいくという考え方は、日本が掲げた「グローバル・サウスへの関与の強化」を全体的に進めていくという発想とは、方向性が異なる。例えばロシアもその一員であるBRICSについて、ロシアを含んだ形で全体的に「関与を強化」していくことは、実際には不可能である。中国の存在も大きすぎるし、南アフリカのシリル・ラマポーザ政権は、中国やロシアと共同軍事演習を行うような立ち位置だ。

岸田首相の考えはどこにあるのか

バイデン大統領は米中対立の時代を大前提にして、自らに近い諸国を民主主義諸国の陣営と特徴づけ、その結束を高めようとしている。ゼレンスキー大統領が率いるウクライナは、ロシアと戦争をしながら北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)への加盟を目指しており、血眼になってこの「民主主義諸国の陣営」に食い込んでいくことを重視していると言える。

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を好んで語っていた安倍政権時代であれば、日本もこの民主主義陣営の中で枢要な位置を占めることをもっと重視していたかもしれない。だが岸田首相の姿勢は、そこまで明確でないように見える。外交政策においては大枠で安倍政権の路線を引き継いでいるはずの岸田政権だが、安倍政権とはひと味違う「新しい資本主義」なるものを唱えて発足した同政権が、より「価値の共同体」色の薄い「グローバル・サウス」概念を参照したがるのは偶然ではないだろう。