難民ベッドは工場や倒産したホテル、体育館にも

現在、ドイツにはシリア、アフガニスタン、イラクからの難民が続々とやってきて、それをそのまま入れているため、これらの国々からの難民は、他のすべてのEUの国を全部足したよりも多くなってしまった。そこにウクライナからの避難民を足すと、ドイツが受け入れた難民は昨年だけで130万人超。2015、16年の難民危機の時の数字をすでに超えている。

難民キャンプで、娘のマグカップに水を注ぐ父親
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連邦政府は、入ってきた難民を容赦なく州に送り込み、州政府はそれを仕方なしに自治体に振り分けるため、困窮しているのは、結局、実際にその難民を受け入れている市町村だ。

難民は生身の人間だから、収容場所が整うまでどこかに積んでおくわけにもいかず、送られてきたその瞬間から、最低限の衣食住の手当はしなければならない。そしてその後も、学校、託児所の手配、さらに医療や心理ケア、ドイツ語習得のための講座と、さまざまな庇護が必要になる。

その結果、どの自治体でも、お金はもちろん、住宅、職員、教師などすべてが不足し、すでににっちもさっちもいかない状態だ。閉鎖した工場や倉庫や兵舎、倒産したホテルやスーパーマーケットから、学校の体育館にまでベッドを並べている自治体もあれば、老人ホームの居住者を違う階に移して場所を作ったり、集落のはずれの空き地にテントを並べたりして急場をしのいでいる自治体もある。

難民認定を受けていなくても留まるケースが多い

現在、難民として認められやすいのは、シリア、アフガニスタン、トルコ、イラク、イランなどからの難民だが、その他の国からの申請者であっても、政治的、人種的、宗教的理由などで迫害されている事実が確認されれば、難民として認定される。そうなると初めて正式に庇護の対象となり、母国が再び安全な国になるまでドイツに滞在でき、働くこともできる。

つまり、認定されなければ、母国に帰らなければならないが、ただ実際問題として、一度入ってきた難民は、認められようが、認められなかろうが、永久に留まるケースが非常に多い。

一方、現在、ウクライナ人は扱いが別で、全員が自動的に、1年の滞在許可を得られる。ウクライナ難民はほとんどが女性と子供なので犯罪の心配も少ないし、女性はドイツで不足している介護職などに携わってくれるため、政府としては歓迎しているところもある。

滞在期限は1年とはいえ、難民ではなく、合法の移民扱いなので、すぐさま職業に就けるし、子供たちは普通に学校に通える。ドイツには元々、ウクライナ移民が多く住んでいたし、文化的にそれほどかけ離れているわけではないため、大して摩擦がない。多くのウクライナ人の滞在期間は、戦争の延長によりすでに1年を超えている。