映像で世界に流れた「小さなすれ違い」

G7広島サミットでは、G7メンバー間の「団結」が劇的に示された。また、拡大招待国8カ国(オーストラリア、韓国、インド、ブラジル、ベトナム、インドネシア、コモロ、クック諸島)とG7の間の交流も良好だった。さらにウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領とナレンドラ・モディ印首相の握手に象徴されるように、非G7メンバー間の交流も活発だったようだ。

G7広島サミットで2国間会談を行ったウクライナのゼレンスキー大統領(右)とインドのモディ首相(2023年5月20日)
写真=dpa/時事通信フォト
G7広島サミットで2国間会談を行ったウクライナのゼレンスキー大統領(右)とインドのモディ首相(2023年5月20日)

あえて言えば、ただ一点だけ、不穏な関係があった。ゼレンスキー大統領とブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領は、ついに2国間の会合を持たなかった。ゼレンスキー大統領が全体会議場に入ってきたとき、あえて目をそらして机の上の書類を注視しようとし続けるルラ大統領の姿が、テレビのニュース画像に映っていた。

「グローバル・サウス」はどこに行ったのか

今回の広島サミットで、議長国・日本は、事前に設定した重要課題に「いわゆるグローバル・サウスへの関与の強化」をあげていた。日本国内のメディアでも、「議長国日本はグローバル・サウスを取り込めるか」といった議論が華やかだった。

しかし日本以外の他のG7諸国は、G7広島首脳コミュニケウクライナに関するG7首脳声明をはじめとする一連の成果文書・声明等で、「グローバル・サウス」という概念を使うことに反対した。結果的にこれらの文書・声明においては、「パートナーとの連携」という表現が多用されることになった。G7全体としては、4月のG7外相会合における姿勢がそのまま引き継がれた形だ。

非欧米諸国との連携が重要であることは間違いない。しかしその対象を、各国の多様な立ち位置を無視した「グローバル・サウス」という大雑把なくくりで考えた日本の方針は、果たして的を射ていたのか。本稿ではそれを考えてみたい。