「G7はかつてなく結束している」の意味
人々にさまざまな思いを残したG7広島サミットが終わった。実りの多いサミットであった。これほど多くの人々に「感動した」と言わせる国際会議は、珍しい。関係者の努力に敬意を表する。そのうえで、背景となった要素を三つ上げると、ウクライナ、ゼレンスキー、そして広島、ということになると思う。
ロシアのウクライナ侵攻の危機は、G7参加者にかつてない緊張感を与えている。G7メンバー(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ+EU)は、協調しつつ多大な努力を払って侵攻への対処策を講じている。アメリカのジョー・バイデン大統領をはじめとする多くの参加者たちが、「G7はかつてなく結束している」と発言したが、これは危機対応の緊張感がもたらしている事情でもあるだろう。
今回のサミットはG7それ自体の枠を超え、インド、オーストラリア、韓国、ブラジル、インドネシアなど、さまざまな国々の多彩な指導者が一堂に会した会議ともなった。とりわけ大きなドラマが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が駆け付けたことだったのは言うまでもない。ゼレンスキー大統領とインドのナレンドラ・モディ首相の握手は、このG7サミットの成果を示す劇的な場面となった。
圧巻だった献花シーン
しかしこれらの要素は、広島という舞台においてこそ、一層の輝きを見せたのだと筆者は考える。G7メンバーの首脳たちがそろって平和記念資料館を訪問した後、原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)に横並びして献花をしたシーンは圧巻であった。また、ゼレンスキー大統領も、岸田文雄首相と並んで資料館を訪れて献花をした後、「バフムトと広島が重なる」という印象的な言葉を残した。
G7サミットについては、政策的含意についても論じるべき点が多々ある。今回は3回に分けて論点を提示してみたい。1回目の本稿では、最も象徴的な要素としてサミット全体を貫く効果を発した「広島」について考える。