「G7のウクライナ和平政策」が誤解されている

G7はかつてないほどに結束している――。アメリカのバイデン大統領をはじめ、広島サミットに集結したG7首脳は口々にそう語っていた。実際、横一列に並んで原爆死没者慰霊碑に献花する光景や、談笑しながら宮島の厳島神社を訪問する光景は、首脳たちが実際に「結束」を実感している様子を象徴的に描き出していた。

この「結束」をもたらした最大の要素は、ウクライナだ。確かに、各首脳の個性や各政府の政策も無関係ではない。議長国である日本の岸田首相は、「法の支配に基づく国際秩序の堅持」というG7の中核的価値を、サミット全体を貫く視点と定めて維持し続け、「結束」に貢献した。

だがそれ以上に、現実の国際情勢が各国に「結束」を促している。G7メンバーは現在、他の同盟国・友好国とともに、対ロシア制裁とウクライナ向け支援で共同作戦をとっている状態にある。核戦力をちらつかせながら軍事侵攻を行っている側の国に広範な制裁を科し、侵略されている側の国に広範な武器支援を行っている。仲たがいをしている余裕などない。

広島サミットに集まったG7首脳と、ウクライナのゼレンスキー大統領(右から5人目。2023年5月21日)
写真=時事通信フォト
広島サミットに集まったG7首脳と、ウクライナのゼレンスキー大統領(右から5人目。2023年5月21日)

とはいえ、ロシア・ウクライナ戦争をめぐるG7の政策が、そもそもどのような戦略に基づいたものなのか、日本国内ではあまり理解されていないように思う。その大きな原因の一つは、日ごろから反米主義・反政府主義的なイデオロギーを持っている方々が、いたずらにG7の政策を悪魔化して描写する態度をとっているからだ。

「(G7は)ロシアを破壊するために、戦争を美化し、ウクライナに武器を渡して戦いをあおり続けている」、あるいは「ロシアに制裁は効果を持たない。ウクライナが占領地の全てを奪還することなどできない。G7メンバーは疲弊しやがて自滅していく」、といった言説が、ある種の思想的傾向を共有する人々の間であふれかえっている。果たしてG7は、彼らの言うように、ロシアを破滅させる野心に駆られ、何ら現実的な目標を持たず、無責任に代理戦争を盛り上げているだけなのだろうか?

本稿では広島サミットの開催を機に、理解されているようで理解されていないG7のウクライナ和平政策を、あらためて整理し直すことを試みたい。