ロシアの「ゴネ得」をG7は看過しない
このことは、「ウクライナが領土を全て回復するまで戦争が続く」ということまでを必ずしも意味するものではない。停戦は軍事的な現実によって決まり、妥協は現実の評価の中で決まっていく。それでも、停戦によって不承認主義が放棄される形にはならないだろう。領土の回復を外交的努力に委ねる形で、停戦と不承認主義の間の折り合いをつける努力がなされるだろう。なぜなら安易な妥協は、将来に禍根を残し、国際秩序をも危機に陥れるからだ。
G7は、停戦の機運が出てきたときも、ウクライナの領土的一体性の尊重それ自体を見限ることまではしないはずである。全ては、将来のロシアあるいは他国による、新しい侵略行動を抑止するためである。これは、ロシア・ウクライナ戦争の停戦合意の枠組みを構成する基本的な考え方となるであろう。
「永続的な平和」をどう構築するか
日本語のG7首脳共同声明で「永続的」とされているのは、原文の英語版では「lasting」である。長続きする平和、という意味である。いったいどのような平和が、長続きする平和だろうか。
ロシアが再侵略をする恐れがない状況の平和が、長続きする平和である。すぐにまたロシアが侵略してくるだろう状況の平和は、短期的な平和である。どうすれば、ロシアの再侵略の恐れが取り除かれた状態を作れるのか。抑止力を確立すること、がその答えである。
ロシアのプーチン大統領は、昨年2月24日の時点で、3日間ほどでウクライナの首都キーウの政権を転覆させ、傀儡政権を樹立することができると期待していたといわれる。なぜそのような安易な見込みを立ててしまったかと言えば、ウクライナの実力を過小評価していたからである。
したがって、ロシアの指導者に抑止となる実力の存在を覚知させることが、再侵略を防ぐための条件である。十分な実力を伴った抑止力なくして、ロシアの再侵略の恐れを取り除いた長期的な平和を作り出すことはできない。これがG7の考え方である。