裏付けるデータを求め、全国の進学校を調査
「だからこそ、自分たちの課題意識を裏付けるデータの必要性を強く感じてきました。なぜ東大に2割しか女子がいないのか。それは単純に能力の差ではないことを理解してもらうためにも必要だと思ったのです」(江森さん)
「ジェンダーの問題というだけで、対話の扉を閉ざしてしまう人もいます。当事者だけの問題にせず議論を深めるためにも、データが必要でした」(川崎さん)
2017年に東大が女子学生への家賃補助の制度を始める時には、「男子差別だ」とSNS上などで強い反発が起きたことは記憶に新しい。この一件も、進学において地方の、特に女子がどれだけ不利な状況であるかを理解していないからこそ起きたものだ。
調査は、#YCPが主体となり、2023年2〜4月に「偏差値が67以上」「東大合格者が例年5人以上出ている」などを目安に全国の進学校97校の高校2年生の男女を対象に実施。3716人が回答したが、その結果を首都圏男子、首都圏女子、地方男子、地方女子として分析した。
地方女子は東大進学にメリットを感じにくい
調査結果からは、まさに地方女子の当事者が感じてきた課題がデータとして浮かび上がってくる。「偏差値の高い大学に行くことは自分の目指す将来にとって有利だと思うか」という設問に対して、首都圏では男女にそれほど差がないのに、地方女子と地方男子では顕著な差がある。学歴が自身のキャリアにそれほどプラスに働かないと地方の女子は感じているのだ。
さらに地方女子にはいくつかの「呪縛」があることも浮かび上がってくる。キーワードは「地元」「安全」だ。
例えば「偏差値の高い大学に行くこと」と「資格のある職業に就くこと」のどちらが自身の将来にとって重要かを尋ねた設問で、資格重視の割合は首都圏男子が13.2%、首都圏女子で20.8%、地方男子で17.9%だったのに対して、地方女子は28.5%と高い。
先の福岡出身の古賀さんも、「理系で成績が良ければ、とうぜん九州大学か地元の医学部に行くよね、という雰囲気があった」と話し、メンバーの知り合いの中には、東大に行きたかったけれど親の反対もあって、地元の国立大学の医学部に進学した女子もいるという。