発送電分離は骨抜きにされていた

漏洩した情報には「どこの会社に電気をいくらで売っているか」といった内容もある。「あなたの会社は新電力から電気を買っているけど、わが社と契約したら安くしますよ」のように使われると自由化も公平な競争もあったものではない。

不正閲覧は自由化のかなめである「発送電分離」が骨抜きにされていることを示した(不正閲覧に関わったのは関西電力、東北電力、四国電力、中部電力、中国電力、九州電力、沖縄電力)。

筆者提供
情報漏洩に関して関電が顧客に出したわび状

原発立地と電力会社の大スキャンダル

③関電の高額金品受領

不祥事といえばこの衝撃的な事件を忘れるわけにはいかない。関西電力の役員らが、原発が立地している福井県高浜町の元助役(故人)や元助役の関連会社から超多額のお金や品物をもらっていた事件である。分かっているだけでも1987年以降の約30年間にわたって関電関係の約80人が総額4億円近い金品を受け取っていた。額の大きさ、期間の長さからみても他に類を見ない事件だ。

この事件は2018年、原発に携わった会社への国税当局の強制調査が入ったことから発覚。この会社から元助役に3億円が流れ、その一部が関電役員に渡っていたことが分かった。ここからが不思議な処理だが、関電の役員はもらった金品のうち「手元に残っていたもの」を元助役側に返却し、所得の一部について修正申告し、所得税を納めた。

この一連のことは当時外部に知られず、19年9月の報道で世に知られた。この大スキャンダルが暴露された後、関電の役員らが報酬を減らされたが、後で密かに補塡ほてんされるというさらに信じられないことも起きた。

朝日新聞は、不正閲覧問題に関係した電力5社の再発防止策を報じた5月13日の記事で、「関西電力は不祥事が発覚して再出発を誓うものの、すぐにまた別の不正が見つかることを繰り返している」と断じている。