「独自候補擁立」のほうが野党内での求心力を生む

立憲の方針転換は、実際に他の野党に影響を及ぼしている。

立憲に対し近親憎悪的な態度で臨んでいた国民民主党の榛葉賀津也幹事長は5月12日、連合の清水秀行事務局長に対し「立憲も200人(擁立)を目標に頑張るというから、協力できるところは協力したい」と、選挙協力に前向きな姿勢を示した。

立憲が泉体制になって以降「共闘」に距離を置き気味だった共産党の志位和夫委員長は20日、立憲との共闘構築へ協議に入りたい考えを示した。小池晃書記局長は22日の記者会見で「泉氏の態度が変わらないのであれば積極的な(候補者)擁立を進めていく」と立憲をけん制したが、「共闘の話し合いは門戸を閉ざさず求めていく」姿勢は変わっていない。

面白いことに、立憲が「独自で候補擁立」をうたったほうが、かえって野党内での求心力を高める結果を生んでいるのだ。

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自ら戦って勝ち、野党の中核としての立場を確立することで、初めて求心力が生まれ、他党も引き寄せられる。その結果、衆院小選挙区では立憲の旗の下で候補者の一本化が進み「大きな構え」が構築される(比例代表では野党各党がそれぞれの旗印の下に戦うのは当然だ)。中小野党やその支持者には納得しにくいだろうが、こういう「構え」を構築できなければ、野党に力強さは生まれない。

次期衆院選における野党「共闘」は、そんな形を目指すべきだろう。

地域事情も考慮して選挙戦を戦えばいい

立憲が自民党に対する「政権の選択肢」であり続けるためには、目指す社会像を異にする維新との「野党第1党争い」に決着をつけることが不可欠だ。そのためには、立憲自身が多くの小選挙区で候補を擁立し、維新との直接対決で勝たなければならない。

立憲の空白区を多く残してしまえば、そこに維新が候補を擁立し、野党票をかっさらっていくつかの議席を獲得する。維新の小選挙区での伸長を許すことになりかねないからだ。維新が自民党に勝利した4月の奈良県知事選や衆院和歌山1区補選では、いずれも立憲系の候補者がいなかった事実を忘れてはいけない。

他の中小野党も、そのことを踏まえた上で次の衆院選の戦い方を決めるべきだ。「自分たちの望む社会を実現するには、立憲と維新のどちらが野党第1党であることが望ましいのか」という命題をそれぞれが考えた上で、自らの判断で選挙戦略を決めれば良い。

党中央で一律の選挙協力を決めるのではなく、協力のあり方はそれぞれの地域事情で最も良い形を選べば良い。選挙区によってはあえて競合して切磋琢磨せっさたくまするなかで、それぞれの比例票を伸ばす戦いがあってもいい。

一つ言えるのは、21年の前回衆院選のように、外部の団体によって大小の野党が同じ立場で手を結ぶような選挙協力の形は、おそらくもう古い、ということなのだ。

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