これまでの野党共闘は他党に頼り過ぎていた

もっとも、この発言と並んで泉執行部が打ち出した次期衆院選への姿勢はなかなか興味深かった。次期衆院選において「日本維新の会や共産党とは選挙協力をしない」と宣言したのだ。これは「立憲が純化を図っている」ということではない。「立憲がようやく、自力で選挙を戦う気になってきた」ということだ。

ここ2年ほどの立憲の選挙における「弱さ」の原因の一つに「他力本願的な姿勢」があったと、筆者は考えている。結党直後の衆院選で、壊滅寸前の絶望的な状況から野党第1党の座を勝ち取った時のような「自力で勝ち抜く」たくましさが、野党「共闘」が自己目的化するなかで薄れていたのではないかと。

小選挙区制の衆院選を戦う上で、非自民勢力ができるだけ候補者を一本化して戦うことに、死活的な意味があるのは確かだ。しかし、候補者一本化を目指して他党と選挙協力を進める際に、野党を牽引すべき立憲のなかで「他党に頼る」態度が一部でみられたことは否定できない。他党の候補擁立を想定して自らの候補擁立を手控えたり、勝ちを見込めない「保守王国」の選挙区を他党に押し付けたり、そういう姿勢はなかっただろうか。

高層ビルの立ち並ぶオフィス街で見上げる男性
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立憲との選挙協力に期待する中小野党の側にも「立憲だけでは自民党に勝てない。協力してやるからこちらの主張を受け入れろ」という、いささか強気過ぎる考えはなかっただろうか。

「共闘」をめぐる野党間の駆け引きが伝えられるなかで、立憲に、ひいては野党全体に「ひ弱な弱者連合」という印象を与えてしまった可能性がある。

小政党への配慮で「目指す社会像」がぼやけた

もっと良くなかったのは、立憲が選挙協力にあたって、個別政策面でも他党との妥協を余儀なくされたことだ。

国民民主党の多くの議員を迎え入れた2020年秋ごろまでは、立憲は「政党間の合従連衡にはくみせず、『支え合う社会』という自らの旗印の下に仲間が結集する」という明確な意識があった。だからこそ、結党から2年ほどは、周囲の「野党はまとまれ」論にあえて背を向け、自力での党勢拡大を目指していたのだ。

しかし、その後他党との協力を模索する段階で、旗印を掲げる役割が立憲から市民連合に移り、野党各党の立場は、政党の大小にかかわらず「同格」になった。逆に「大政党は小政党に配慮するのが当然」などと言われ、立憲が対応に苦慮する場面が目立ち始めた。

しまいには、本来の立憲の旗印だった「支え合う社会」とは微妙に矛盾する「時限的な消費税減税」まで共通政策に盛り込まれた。他党がそこを強烈に主張したことで、立憲の「目指す社会像」はますます見えにくくなった。

「4年で政権選択選挙に持ち込む」ためには仕方なかった面もあるだろう。しかし、立憲が何のために自力での党勢拡大を目指してきたのか、最後はよく分からなくなっていた面は否めなかった。