「真にやむを得ない理由」が横行

ところが、支社の現場では、「真にやむを得ない理由」があるかのように演出し、取締役会から決議を引き出す欺瞞ぎまんが日常茶飯事だった。

どういうことか。

支社の担当部署は、必要な移転先を探す本来業務より、局長に局舎を持たせる目的を優先する。つまり、局長が局舎を欲しがるなら、移転先は局長に見つけさせ、地主との交渉も局長にやらせる。局長から「土地は自分に譲って」と地主に働きかけ、地主から支社社員に「土地はどうしても局長に」と言わせることで、さも「真にやむを得ない理由」があるかのように演出する。じつに手間の凝った工作である。

こうした実態を裏付けるように、20年初めには当時の全国郵便局長会会長が組織の会合でこう公言していた〔詳細:「どうせ出来レース」地主も嘆く、郵便局長「局舎横取り」疑惑の真相:朝日新聞デジタル(asahi.com)〕。

「各支社の担当は(局長の)意見を最大限尊重するスキームになっている」

虚偽報告は「自然に起きたこと」

それでは、日本郵便が1年以上も費やした「調査」の結果はどうだったか。

今回の処分対象は、支社社員が地主と話もせず、その意向をでっち上げて報告書類に記した例に絞られた。いわば「演出」が行き届かなかった例である。それだけでずいぶんな数だが、地主に働きかけて日本郵便の取引を妨害した局長の行為や、担当部署が局長と共に実質的に取締役会を欺いた行動は、すべて見過ごされることになった。

何より驚かされるのは、ウソ報告の「動機」や「原因」の説明だ。

いわく、支社社員は調達手続きの理解が希薄だったため、業務の煩わしさから、局長の意向をくもうとウソの報告書を書くに及んだ――。ニュースリリースには、そんなふうに書かれている。

これでは、業務が煩わしいからウソをつく阿呆あほうな社員が各地で50人超もいた、という話になる。事実なら小学生レベルの不祥事で、企業のガバナンス以前に、社会人としての資質が集団的に疑われる事態だ。

担当役員の坂東氏は会見で「ミス」だの「不備」だのと補足し、「意図もなく組織的でもない」と主張するために、「自然に起きた」「空気の中で起こった」などの言葉も継いでいった。

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こうした説明が事実と異なるのは疑う余地もなく、ウソと言っても過言ではない。

調査を担った日本郵便のコンプライアンス部門はもちろん、日本郵便という企業そのものの信用が、今回の「事後対応」によって地に落ちようとしている。