失敗は誰の身にも起きるが、失敗をごまかし、ウソで上塗りするのは、組織として最低の事後対応だ。そんな最低な対応を、全国の郵便局を運営する日本郵便が最近、また一つ積み重ねている。地域の住民や郵便の利用者を蔑ろにして、郵便局長会という身内に利得を横流しするためだ。『郵便局の裏組織』(光文社)を上梓した朝日新聞の藤田知也記者が解説する――。
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取締役会のウソ報告を「手続きミス」と釈明

賃料が得られる郵便局舎の移転先物件を郵便局長に持たせようと、取締役会へのウソ報告が日本郵便では横行していた。これは筆者が2021年の夏から追及してきた疑惑である。

日本郵便は4月26日公表のニュースリリースで、ウソの報告を基に取締役会が承認した局長の局舎取得が103件あり、対象期間の移転局舎の3分の1超を占めると認めた。全国13支社のうち9支社で働く社員52人が、ウソ報告に関与していたのだが、同社の信用をさらにおとしめているのは、その釈明内容だ。

「手続きミスの範囲でとどまっています。社員が意図してウソをついたとは捉えていません」

報道陣に対して堂々と言い切ったのは、日本郵便の坂東秀紀執行役員だ。4月26日、オンラインで開いた記者会見の場である。

意図しないミスでウソの報告書を書いた? 筆者が「その説明は一般常識では理解できない」とただすと、坂東氏はこう答えた。

「ヒアリング等の結果から、そういう認識に至っています」

日本郵政グループという上場企業の中核会社が、いかに壊れて手がつけられなくなっているかを物語る一幕ではないか。

局長が局舎移転先の土地を買いあさる「局舎問題」

まずは局舎問題の概要を振り返っておこう。

端緒は、移転する郵便局舎の多くが、現役の郵便局長の所有物になっていたことだ。登記簿などで調べてみると、2018~20年に移転した局舎のうち約3割が現役局長の所有だった。移転の直前に、局長が第三者から土地を買ったり借りたりするケースが多く、戸建ての新築局舎に絞れば、割合はさらに高くなる。

日本郵便は親会社が上場した2015年以降、移転先の物件を局長が取得するのは原則禁止としている。不当利得を防ぐ目的で、どうしても社員に持たせるのは「真にやむを得ない理由」があると取締役会で決議した場合に限る。地主が「日本郵便には土地を譲りたくないが、局長なら譲ってもいい」と言い出すような、ごくまれなケースに限ると社内ルールで定めている。