そこで中古車へもサブスクの提供を広げ、収益源としたい考えだ。記事によると、フォルクスワーゲンのソフトウエア部門であるカリアド社は、フォルクスワーゲン車のインパネやアプリに「高度にターゲティングされたデジタルキャンペーン」、すなわちパーソナライズしたデジタル広告を配信することが可能だと説明している。
無料期間のオファーなどで顧客を引き込み、これまで収益源とならなかった中古車のオーナーからも料金を徴収したい構想だ。
ユーザーには不利益でしかない
クルマは購入費用だけでなく、維持費用にも相当な金額を要する。毎月のガソリン代や駐車場代、車検代や整備費用に加え、GMが見込むように新たに1万1000円を毎月支払いたいと考えるユーザーばかりではないだろう。
サブスクは本当に「合理的」なシステムなのだろうか。シートヒーターに月額1500円を7年間払い続けたと仮定すると、合計額は12万6000円にも上る。払い切りのオプション装備として2万~4万円ほどで購入できることを考えると、ユーザーにとって到底合理的とは言えない。
冬場のみ契約すればもちろん倹約は可能だが、一度契約したきり解約を忘れるというのはサブスクのよくある失敗でもある。BMWの場合、はじめから払い切りを選択すれば一般的な価格での購入も可能となっており、もはやなぜサブスクをプッシュするのか不明だ。
アメリカではすでに、議員が車内装備のサブスク化を問題視するようになった。米ABCの系列局は、北東部ペンシルベニア州において、シートヒーターなど車載機器のサブスクを禁止する法案が提出される見込みだと報じている。この議員は、「企業の収益になるが、消費者には不利益」だと指摘しているという。
何でもサブスク化するのは大間違い
メーカー各社は使いたいときだけ支払う利便性をアピールしているが、消費者は冷静だ。気前よく全車にオプションを事前装備する姿勢には、トータルの金額で回収できて余りあるというメーカーの思惑が垣間見える。
しかし、トータルの支出金額こそ消費者が気に掛けている部分であり、サブスク化は根本的に購入者の利益に反するものだ。
ソフトウエア界のビジネスモデルに影響を受けたものだが、そもそもクルマをソフトと同様に扱うことも、そもそも適切ではなかったかもしれない。
日々アップデートし、新たな機能が増えるソフトウエアならば、月額の支払で最新版を保つことにまだ意義はある。しかし、オプション装備のサブスク化は、クルマを「所有する」という最大の喜びを奪ってしまった。
収益源を模索するメーカーの苦肉の策ではあるものの、世界の反応を見るに、大歓迎からはほど遠い地点にあるようだ。