“幼児連れ去り事件”でサブスクが問題になった
アメリカでは今年2月、車内に残された幼児がクルマごと連れ去れた際、車両追跡機能のサブスクに加入していないことを理由に自動車メーカーが同機能の有効化を拒否したとして、大きな問題となった。
米CBSニュースは、その顚末を報じている。記事によると、中西部イリノイ州で妊娠中の女性が運転していたクルマが盗難に遭い、乗っていた幼児の息子が連れ去られた。
保安官代理は米フォルクスワーゲンに対し、迅速な解決のため、当該車両の追跡機能を有効化するよう要請。ところがフォルクスワーゲン側は、オーナーがサブスク費用を支払うまではサービスを提供できないと述べ、これを拒否した。
母親は以前からサービスに加入していたが、このところ支払が滞っていたという。同社は150ドル(約2万円)を支払うまでサービスを再開できないと告げた。
母親が残債を支払ったあとでサービスは復帰し、幼児とクルマは無事に回収された。フォルクスワーゲンはその後、対応について釈明。緊急時のために警察との連携手順を定めていたが、これが遵守されなかったと説明している。
この一件は、サブスクに対する消費者の歯がゆさを象徴する出来事となった。仮に、追跡機能に必要なシステムがそもそも搭載されていなければ、追跡不可能だったとしてもフォルクスワーゲンが責められることはなかっただろう。
車両追跡、遠隔操作、自動運転もサブスク
しかし本件では、すでにオーナーが手にしている機能を、あたかもメーカー側が悪意をもって制限しているかのような印象を帯びて世に受け止められた。ハード的にそこに存在するのにブロックされて使えないという状況は、想定以上の苦痛を消費者にもたらすという教訓を物語る。
オプション装備のサブスクは追跡システムにとどまらない。米インサイダーは2022年夏の騒動を振り返り、BMWがシートヒーターのサブスクを発表して反発を受けたと指摘している。米CNNによると、同機能は月額10ユーロ(約1500円)を要する。
CNNはまた、メルセデス・ベンツが加速度の向上に追加料金の支払いを請求しているほか、スウェーデン・ボルボと中国・吉利グループのEVブランド「ポールスター」も、1度のみの買い切り料金でエンジン出力を解放していると実例を挙げる。
米著名テック誌のワイアードは、「ほぼすべての世界の自動車メーカーが、何らかの形でサブスクを提供している」と言えるほどになったと述べている。
同誌によると、Teslaの自動運転が月額99~199ドル(約1万3000~2万7000円)で提供されているのを筆頭に、GMの衝突検知・ロードアシストシステムの「オンスター」が月額8ドル(約1100円)、遠隔スタートなどが可能なトヨタの「リモートコネクト」が8ドル(約1000円)などとなっている。なお、一部は年払いで2割ほど安価になる。