注意や叱責をされて不機嫌になるのは損
また、普通の人なら不快になるようなことにも、感謝しなさいと諭した。
誰だって他人から注意されたり叱られたりするのは、うれしいはずはない。いくら上司であっても、強く叱責されたら、ついついふてくされた態度をとってしまう人もいるだろう。
けれど、そうなると上司はその人に対して注意を控えたり、その部下を信頼しないようになっていく。つまり、不機嫌になることは、回り回って自分の損になる。だから、他人の注意や叱責も感謝の念をもって素直に受け入れることが大事だというのだ。そうすれば、多くの者が親切で的確なアドバイスをくれるようになり、それがその人を進歩向上させることにつながるのだと考えた。
「採用担当者は感謝の念をもって面接しなさい」
さらに幸之助は、「人事採用の担当者は、感謝の念をもって採用面接を実施しなさい」と述べている。ちょっと意図が想像できないが、幸之助は次のように考えたのである。
「採用された者はもちろんだが、不採用になった者も、松下電器を志望したからには我が社に関心をもっているはず。つまり将来、彼らは松下電器の顧客になる人々だから、十分に良い印象を与えるようにしなくてはならない。そのためには、人事採用の担当者は面接のさい、感謝の念をもって応募者に接することが大切なのだ」
なんともユニークな発想だろう。
ただ、いま見てきたように、どんなことにも感謝の念をもつというのは、究極のプラス思考といえるのではなかろうか。