「経営の神様」松下幸之助の成功の秘密
ところで、幸之助が経営で大きな成功を遂げたのは、すべてに感謝する心をもっていたことが大きいと思う。
たとえば、幸之助は次のように言っている。
「感謝の念ということは、これは人間にとって非常に大切なものなのですね。見方によれば、すべて人間の幸福なり喜びを生み出す根源ともいえるのが、感謝の心だといえるでしょうからね。したがって、感謝の心のないところからは、決して幸福は生まれてこないだろうし、結局は、人間、不幸になるということですな。感謝の心が高まれば高まるほど、それに正比例して幸福感が高まっていく。つまり、幸福の安全弁ともいえるものが、感謝の心だといえるわけですね。その安全弁を失ってしまったら、幸福の姿は、瞬時のうちにこわれ去ってしまうというほど、人間にとって感謝の心は大切なものだと思うのですよ」(「幸福を生み出す根源 松下幸之助のことば〈83〉」『若葉』1977年所収、松下幸之助.comより引用)
感謝する心が人間の幸福や喜びを生み出す
このように幸之助は、感謝する心が人間の幸福や喜びを生み出すと断言する。
だから朝礼などを通じて幸之助は、松下電器の社員たちにもたびたび感謝の大切さを語った。
「社会には(略)貧困病苦に悩みながら、医療を受けられない多数の人のあるのを思ふ時、幸ひ健康で仕事に従事出来る我々は深く感謝の念を持つとともに、又報恩の考へも持たねばならぬ。感謝の念、盛になれば従つて報恩の心も強く、真にこの念を抱くところ、無限の力、勇気が生じるものである。諸君もどうか、常に感謝の念を忘るゝことなく努力奮励せられたい。それが、やがて社会、国家に報恩の行ひとなるのである」(松下電器産業株式会社教務部編『社主一日一話』同部、1941年)
このように幸之助は、健康で仕事ができるという、ある意味当たり前のことにすら感謝の念を持ち、その恩を社会や国家に還元する努力をすべきだというのだ。