楽観的な人は「楽観的な人が多い」と考える

同様に、人は「自分の意見や考え、行動が常に多数派であり、正しい」と考える傾向があります。

たとえば、以下の項目に当てはまる日本人は、それぞれ何%くらいいると思いますか?

A.楽観的な人
B.怒りのコントロールが苦手な人
C.全粒粉入りのパンが好きな人

イラスト=ナカオテッペイ

じつは、これらの質問への回答は、あなたの普段の考え方や行動によって左右されることが明らかになっています。

たとえばAの質問では、自分のことを楽観的な性格だと思っている人は、思っていない人よりも、高い数字を予想しました。自分が楽観的だと、「世の中には楽観的な人が多い」と推測しがちです。Bの質問のように、自分が抱えている問題について尋ねた場合も同じことが起こります。

Cの質問の答えは、自分がその対象を好んでいるかどうかで決まります。自分が全粒粉入りのパンを好きでない場合は、好きな場合と比べて、より低い数字を予想します。

「みんな自分と同じ」という錯覚

ほかの人も自分と同じように考えたり、感じたり、行動したりするだろうと過大に見積もる傾向を「フォールス・コンセンサス」と言います。フォールスは「偽の」、コンセンサスは「合意」という意味です。

私たちは、自分の意見は一般的であり、広く世間に受け入れられていると考えがちです。しかし、このような思い込みにもとづいて行動することは、トラブルのもとになります。

「相手は自分と違うかも」という意識を普段から持つように心がけるとよいかもしれません。

ある実験では、参加者に自分が投票する予定の政党を答えてもらったあと、次の国政選挙での支持政党の予想得票率と、有権者全員が選挙に行くと仮定した場合の支持政党の予想得票率の2つを回答してもらいました。

その結果、自分の支持政党がどこかにかかわらず、有権者全員が投票に行くなら、自分が支持する政党の得票率が上がるだろうと予想していました。つまり、普段は選挙に行かない人でも、投票する機会があれば、自分と同じように投票すると思っていることがわかります。