スロットが止められず自宅を担保に…

英国でギャンブル被害防止に取り組むアダム・ブラッドフォードさん(30)の父デービッドさん(66)は、ひどいギャンブル依存症だった。「今から9年前のことです。会計士として周囲からも信頼されていた父が帰宅して『明日、裁判所に行く』と告白しました。翌日、父は裁判所から戻らず、弁護士から自宅に電話がかかってきました」と振り返る。

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アダム・ブラッドフォードさん(右)
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父はオンラインのスロットマシンにのめり込み、こっそり自宅を担保に入れて50万ポンド(8500万円)の借金をつくっていた。勤め先から5万ポンド(850万円)を盗み、罪に問われた。アダムさんは父と一緒にギャンブル依存症の恐ろしさを訴え、19年に賭博電子ゲーム機の賭け金の上限を1回100ポンドから2ポンド(340円)に引き下げることに成功した。

「05年のギャンブル規制緩和の見直しが長い間行われず、被害を広げてしまいました。ギャンブル産業と政界のつながりが背景にあります。約50万人がギャンブル依存症とされ、潜在的なリスクはさらに数百万人に広がるとみられています。英国政府は現在、ギャンブル法をデジタル時代に対応させるために見直しています」(アダムさん)

イギリスはオンラインカジノの法整備に取り組んでいる

アダムさんは続ける。

「ギャンブルには中毒性があり、ゲームのデザインや大量の広告によって、弱い人が自分の賭けをコントロールし続けることが難しくなっています。企業は問題ギャンブルの発生を防ごうとスマートリミット(賭け金の上限)やアフォーダビリティ(支払い能力)チェック、行動分析を使うなど、対策はより洗練されてきています」

11歳の時に自閉症と診断されたアダムさんは父と英領ジブラルタルにあるゲーミングコンプライアンスとテクノロジーの専門会社と共同で、デジタルセラピーツールとして「ベットプロテクト」を開発した。ギャンブラーに小休止と安全な空間を提供し、自分の賭け事をコントロールできるようにするツールだ。ベットプロテクトは現在、ギャンブル業界全体に展開されている。