「テクノロジーを活用すればカジノは問題にならない」
日本のカジノ解禁について、アダムさんの同僚で、ギャンブル業界のエキスパート、ポール・フォスター氏は「規制は、運営の枠組みやルールを作るため、プレイヤー保護の重要な基礎となるものです。これにより、ブラックマーケットのギャンブルを減らし、完全な課税とライセンスによる規制が可能になります」と指摘する。
オーストラリアはマネーロンダリングや依存症対策として「キャッシュレスカジノ」を目指している。「すべてのプレイヤーがサインアップからプレイまで監視されます。カジノ内の安全なギャンブルエリアが確保され、プレイヤーはギャンブルをエンターテイメントとして利用することができ、危険ゾーンから遠ざかることができます」(フォスター氏)
「立法者はプレイヤー保護を確実に実行するためにあらゆる選択肢を検討し、ゴールドスタンダード(絶対基準)を設定するためにテクノロジーを活用することが重要です。これが実行されれば、新しい統合型リゾートの創造は社会にとって有益なものとなり、ギャンブルの歴史的な問題を引き起こすことはないでしょう」とフォスター氏は提言する。
日本でも違法なオンラインカジノ利用者は増えている
日本のギャンブル依存症患者の現状はどうなのか。
国立病院機構久里浜医療センターが2021年に発表した「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」(注)によると、回答者の50%がパチンコ、23%がパチスロ、29%が競馬、7.8%が競艇、5.5%が競輪、2.4%がオートレースを経験。海外のカジノ経験者は7.2%。1カ月当たりギャンブルに使う金額は男性で1万~5万円、女性で2000~5000円が最も多かった。
(注)松下幸生、新田千枝、遠山朋海: 令和2年度 依存症に関する調査研究事業「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」2021年
過去1年にギャンブル等依存が疑われた者は2.2%で、男性3.7%、女性0.7%。これを日本人の人口(18~74歳)に当てはめると全体で187万6000人、男性158万1500人、女性29万7800人と推定される。ギャンブル等に使った金額は男性では1カ月当たり5万円(中央値)で、パチスロやパチンコの割合が高かった。
日本では継続的なギャンブル依存症調査と対策が不可欠
17年時点の中間まとめでは、
(1)生涯でギャンブル依存症経験が疑われる人は推計3.6%、国勢調査のデータから推計すると約320万人
(2)最近1年間にギャンブル依存症状態だったと疑われるのは推計0.8%で約70万人
(3)ギャンブルへの賭け金は平均月5.8万円
(4)患者数は外来2929人、入院261人(16年)
という数値を発表している。
14年にはギャンブル依存が疑われる人は全国の20歳以上の男女の約5%に当たる536万人(男性9%、女性2%)という調査結果が公表されている。
日本でもスマートフォンの普及に伴って、国内では違法とされるオンラインカジノにアクセスし、賭博を行う人が増えている。デジタル分析支援会社の調査によると、オンラインカジノへの日本からのアクセス数は18年12月に月約70万回だったが、コロナ危機の巣ごもり需要で21年9月には約8300万回と約118倍に膨らんだ。事態を重く見た警察庁は消費者庁とともに22年10月、「オンラインカジノに接続して賭博を行うことは犯罪です!」と警告を出した。
カジノ解禁を云々する前に、日本では継続的なギャンブル依存調査と総合的な対策が不可欠だ。カジノが必ずしも「最悪の賭博場」とは限らない。オンラインカジノにも目を光らせる必要がある。