全国の消費者センターと弁護団による2015年から2019年の図表2「過去5年間の商品別被害集計」によると、商品名の欄には、「印鑑」「数珠・念珠」「壺」「仏像・みろく像」「多宝塔」「人参凝縮液」「献金・浄財」「絵画・美術品」「呉服」「宝石類・毛皮」「仏壇・仏具」「借入」「ビデオ受講料等」「内訳不詳・その他」が並ぶ。

出典=『新宗教の現在地

ここに、懐かしい「みろく像」が出てきて驚いた。

拙著『新興宗教ブームと女性』(新評論)の中で、統一協会による主婦向けの宗教法人「天地正教」を取り上げた。天地正教では、そのご本尊である弥勒菩薩について、「この弥勒菩薩の正体こそ文鮮明である」とまことしやかに明かすトリックを使った霊感商法を展開していた。

櫻井義秀・中西尋子著『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』(2010年、北海道大学出版)によれば、この天地正教の信者の大半は主婦層であり、統一協会の「ダミー教団」と言われることもあるという。天地正教では、壺や多宝塔を「霊石」として扱っていた。天地正教は1999年に「和合」という形で、旧統一協会に事実上吸収された。

この「みろく像」の項目は、天地正教がなんらかの形で生き残っていることを示しているのかもしれない。

「子供のアトピーを治したい」7割は主婦だった

私が1990年代に天地正教に潜入した時、集会に集まっていた女性は、誰もが実直そうな主婦であった。私にこの集会のことを教えてくれた主婦も、「子どものアトピーが治るから」と誘われて入ったのだと話してくれたのが印象的だった。

2019年度だけで、家庭連合(旧統一協会)による霊感商法の被害額は11億円を超えている。しかしこうした事実は、先述の通りマスコミも報道せず、一般的にどれほど周知されているのか疑問である。

そこで、対策弁連の山口広事務局長に、「全国統一教会被害者家族の会」(以後、「家族の会」)を紹介していただいた。

新型コロナウイルス禍の2020年10月、東京で、「家族の会」事務局長夫婦に話を聞いた。ご夫婦からは、深刻な現状を教えていただいた。

「相談を受けるようになって17年になりますが、その数はおよそ5000件ですね。年間では約300件。今は、新型コロナの影響で対面での相談会などは設けていないのですが、電話やメールなどで相談を受けています」

主婦が被害者となるケースが多く、全体の約70パーセントを占めているという。社会人となった若者(青年)が10パーセント程度、その他大学在学中に関わってしまったケースが5パーセント程度、それぞれ継続して相談が寄せられている。「家族の会」の会報六五号(2020年1月号)によると、詳しい内訳は図表3の通り。

出典=『新宗教の現在地

やはり、「壮年・主婦」が圧倒的に多い。ご夫婦も、「相談件数は、減少していますが、いわゆる妻や母親の「壮婦」被害者についての相談が圧倒的に多いですね」とのことだった。