先輩からの「おつかい」も喜んで

朝の出勤も人より早く来て仕事を任せても大して失敗しない、そつなくこなす。

有名なエピソードがある。当時、安倍の上司は毎晩のようにガブ飲みしていた。仕事の付き合いもあり、止めるわけにはいかず、医者からは「それならば牛乳を飲んでからにしなさい」と勧められた。

とはいえ、当時の神戸製鋼東京本社の売店は2階で、働いているフロアは6階だった。そこで、夕方になると毎日、上司は安倍に牛乳を買いに行かせた。嫌な顔一つせず、そのうちに自ら上司に駆け寄り、買いに走っていたという。

栗下直也『政治家の酒癖』(平凡社新書)

要領が良く、真面目で敵をつくらない。元上司は「専務とか役員クラスまでいけるかどうかはともかく、部長クラス以上にはなったんじゃないですか」と評価している。実際、上司が止めておけと忠告した案件を諦めずにこっそりとすすめ、翌年以降に大きなビジネスにつなげた実績もあったという。

安倍は神戸製鋼の新人時代にはニューヨーク駐在だった。退職後に父親の秘書官として外遊に同行した際は事務所に顔を出し、日本酒などのお土産を差し入れする気遣いもみせていた。

まじめで要領がよく、みんなに好かれるのは会社員としては非常に重要な要素だろう。政治家の手腕とどう結びついたのか、果たしてそれがプラスだったのかマイナスだったのかはわからないが。

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