インスタ映えがルッキズムを加速させる
厚生労働省の思春期の悩みと相談先についての調査(2016年)によると、中学生における悩みは「成績」(62.0%)や「将来の進路」(57.6%)に次いで、容姿や体型などの「身体」が34.7%と多かった。
高校生でもほぼ同様で、やはり「身体」は40.5%と「将来の進路」(63.7%)、「成績」(56.5%)に続いて多くなっている。容姿や体型などに関して悩んでいる若者は多いのだ。
そして若者世代が多く利用するのが、InstagramやTikTokなどのSNSだ。「インスタ映え」に代表されるように、SNSはルッキズム、つまり外見至上主義の世界だ。ルックスがいいとフォロワーや「いいね」も増える傾向にある。
フォロワーや「いいね」がほしい若者は、こぞって写真を加工して美しい肌や細い体を演出するようになり、理想通りではない自分自身を否定するようになる子もいる。
「リアルの肌」を見る機会が激減
高校生新聞に、「思い出は全て『加工の顔に』」という記事が出て話題になった。お互いの顔を加工した写真ばかり残した結果、中学時代の同級生との思い出写真では、お互い元の顔が見られなくなってしまったというのだ。
若者のSNSを利用する時間は長い。肌を加工した写真や細く加工した写真ばかり見ているうちに、「きれいな肌でなければ」「痩せなければ」というメッセージを受け取る。
SNSで毎日のように加工した顔写真を見続け、コロナ禍で顔の半分はマスクで隠した生活が続くことで、本物の肌を見る機会が激減している。本当の肌には産毛が生えているし、シミやシワなどもあり、赤みやほくろなどもある。しかし、SNSの世界にはそのようなものは存在せず、陶器のようにツルリとしている。
加工した肌を当たり前と思っている若者が、鏡で自分の顔を見たときに落ち込んだり、自分の肌や顔に嫌悪感を抱いてしまいがちになるのも当たり前ではないか。