どんな銀行でも取り付け騒ぎに遭うといつでも危機に

銀行は、本来、資金をそれほど多く持っていないということをまず理解しておかなければなりません。そういうと驚かれる方も多いかもしれませんが、その理由は、銀行は預金されたお金を貸し出しに回すか、債券や株式などで投資をすることで利益を得ているからです。

貸し出しの場合、銀行の利ザヤは非常に薄く、優良な貸出先などでは0.25%やそれ以下ということもよくあることです。預かった資金をとにかく貸し出しや債券投資などの運用に回すことで稼いでいるのです。

ですから、銀行自身は資金を多く持っていないのです。そして貸し出しに回したお金は、当然、借り手が期日まで借りることができる一方、預金はいつでも引き出せます。たとえ定期預金であっても、金利が低くなることを覚悟すれば、期日前でも引き出せます。そうすると何らかの理由で一気に預金の引き出しが起こった場合には、どの銀行も対応できないのです。取り付け騒ぎが起これば、ひとたまりもありません。

今回の危機の発端はインフレにより米国の中央銀行であるFRBが政策金利を急速に上昇させたことです。0%近くから5%程度まで一気に金利が上がりました。それにより、国債などの債券価格が急落し、それを大量に保有していたシリコンバレー銀行が危ないといううわさが流れ、取り付け騒ぎとなり、あえなく破綻したわけです。

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通常、銀行はALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)を行っています。これは簡単に言うと、貸し出しや債券などの資産と預金などの負債の満期の期日をある程度合わせることにより、金利が上下した際のリスクを回避するというもので、銀行経営の基本中の基本です。

ところが、シリコンバレーバンクはその基本的な操作を怠っていたのです。それに加え、ハイテク企業への融資が多く、現状のテック企業への逆風もあり、リスクが増し、預金が引き出され破綻したのです。

先ほども説明したように、銀行は基本的に十分な資金を持っていないので、「危ない」ということで取り付け騒ぎが起こると、どんな銀行でももちこたえられません。そうなると、次はどの銀行が危ないのかという「次探し」が起こり、次々と銀行の破綻が連鎖するということにもなりかねません。次の項で説明する1990年代後半の日本の金融危機も同様に破綻の連鎖でした。

もちろん、金融当局や政権は、銀行破綻の連鎖を食い止めようと必死になります。米国の場合だと、通常はFDIC(米連邦預金保険公社)により保護される預金は25万ドルですが、今回は無制限に保護すると発表しています。

それにより、他行から預金が引き出されることを防ごうとしたのです。スイス政府はクレディスイスに対し、多額の資金支援をするとともに、スイスの大手銀行であるUBSによる買収を促しました。そうやって、金融危機の芽を早めに摘み取ろうとするのです。必死です。