住宅ローンを変動金利型で組む人は多い。金利が上がりそうな時代に、どんなリスクを覚悟しておくべきだろうか。ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんは「生活設計のFP相談を受ける立場から言えば、提案された35年返済の『変動金利型』でしか購入できない貯蓄少なめの家庭が変動金利型を利用して住宅購入することは、老後破綻と隣り合わせに見える」という――。
スマホと書類を前に手を組んで考える女性
写真=iStock.com/Ziga Plahutar
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変動金利型での住宅購入は老後破綻と隣り合わせ

住宅購入に限った話ではないが、自分に都合が良い情報ばかりが目に入り、不都合な情報は意識しないと拾えないものだ。住宅ローンの「変動金利型」について言えば、金利リスクがあるという情報を耳にしていても、「変動金利型の金利は20年以上アップしていない」「いざとなれば固定金利に借り換えれば良い」という耳に心地よい話はすっと頭に入り、「利用者が多いからまぁ大丈夫だろう」といった具合に考えて、よく吟味しないままに「変動金利型」で住宅購入に踏み切る人が少なくないようだ。

だが、生活設計のFP相談を受ける立場から言えば、提案された35年返済の「変動金利型」でしか購入できない貯蓄少なめの家庭が変動金利型を利用して住宅購入することは、老後破綻と隣り合わせに見える。その理由をお伝えしたい。

良いことずくめに見える「変動金利型」

住宅ローンは「全期間固定型」「固定金利選択型」「変動金利型」の3つに大別されるが、「変動金利型」の金利の低さは特に目を引く。2023年3月の都市銀行の金利水準を見ると、「全期間固定型」1.7%、「固定金利選択型(固定期間選択型)5年」1.0%、「変動金利型」0.4%程度。中には0.3%台の「変動金利型」を扱う金融機関も複数ある状況だ。

図表1は、同じ5000万円を35年返済で借りるという場合の試算だ。「全期間固定型」なら月15.8万円になる毎月返済額は、「変動金利型」で借りれば月12.8万円と約3万円も少なく、家計に優しいと感じるかもしれない。

【図表1】借入れ時に想定するローン返済プラン(例)
図表=筆者作成

毎月返済額の内訳を見ても、「全期間固定型」なら元金部分は月8.7万円に過ぎないのに対し、「変動金利型」では元金部分は月11.1万円にもなる。これだけ見れば、元金の減りが早く、サクサクと返済できそうに見えるだろう。

加えて、支払う利息の総額は、「全期間固定型」なら1638万円であるのに対し、「変動金利型」ではわずかに359万円で済む計算だ。

以上のように「変動金利型」は、一見、良いことずくめに見えるかもしれない。だが、これらの試算は、あくまで「返済期間中、金利が変わらないものとして試算」した結果に過ぎないことに注意が必要だ。

リスクを理解した上で適切な備えをすることなしに、安易に利用すると、もしもの金利上昇時には大やけどを負いかねない……。「変動金利型」はそんなしくみを内包しているのである。