「一価不飽和脂肪酸」は認知機能を向上させる

この地中海食を続けると、長期的に健康を維持できるだけでなく(認知症の発症リスクを大幅に減らす効果を含む)、脳も大きくなるといわれている。

一価不飽和脂肪酸が豊富に含まれる食品が認知機能に与える効果を確認するため、バルセロナの研究チームが低脂肪の食事(今も広く推奨されている)を、2種類の高脂肪の地中海食と闘わせる実験を行った。

2種類の地中海食の1つは、一価不飽和脂肪酸が豊富に含まれるアーモンドやヘーゼルナッツ、クルミなどの木の実が加えられたものだった。もう1つは、EVOOが、さらにたくさん加えられたものだった。オリーブオイルの多い食事をとる被験者たちは、週に1リットルも摂取した。具体的な数字として、オリーブオイル1リットルのカロリー量は8000カロリー以上──つまり、成人男性に必要なカロリー摂取量の3日分以上だった!

そして6年後、ナッツ類を補う食生活を続けたグループも、大量のオリーブオイルを補う食生活を続けたグループも、認知機能が低下していなかっただけでなく向上していた。

その傾向は、オリーブオイルをたくさん摂取したグループのほうが、わずかに高かった。一方、低脂肪の食生活を続けたグループは、明らかに認知機能が衰えていたという。

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良質のEVOO(オーガニックが望ましい)の植物性の芳香や、咽喉の奥に感じるピリッとした辛味と仲よくなり、それを頻繁に味わおう! キッチンにはEVOOをいつもストックしておこう。加熱するときは、弱火から中火で調理しよう。

そして卵や野菜、魚、また、あらゆるサラダにソースとして使おう。

脂溶性ビタミンの摂取も促される

よい脂肪(卵、アボカド、脂質の多い魚、EVOOなどの高脂肪の食品)をもっと食事に加えた場合の、絶対に見逃せない利点に触れておこう。

このような脂質は、ビタミンAやビタミンE、ビタミンD、ビタミンKなど、脂溶性の必須のビタミンや、β-カロテンのような重要なカロテノイドの吸収を促してくれる。こうした栄養素はDNAの損傷を防いだり、体内にある脂肪を保護したり、脳を加齢から守ったりと、広範囲にわたる恩恵をもたらす。

カロテノイドは、ニンジンやサツマイモ、ルバーブ、またケールやホウレンソウなどの葉物野菜に豊富に含まれる黄色やオレンジや赤の色素で、脳の強力なブースターといわれている(濃い緑の葉物野菜のカロテノイドは、葉クロロフィル緑素の緑の色素によって隠れてしまうため目には見えないが、ちゃんとそこにある)。カロテノイドのうち、ルテインとゼアキサンチンは神経系の働きを改善し、「結晶性知能」、つまり人が一生のあいだに獲得していく技能や知識を適用する能力とも関連があるという。

カロテノイドを血液中に入れるには、脂肪と抱き合わせにする必要がある。

たとえばサラダを食べる場合、脂質を含む食品と一緒に食べないと、カロテノイドはごくわずかしか吸収できない。サラダにかけるものとして最高の選択肢は、EVOOだ。これを、たっぷりかけることをお勧めする。

あるいは、単に全卵をいくつか添えるだけでもいい。パデュー大学の研究では、サラダに全卵を3つ加えた被験者は、1つも加えなかった被験者と比べて、カロテノイドの吸収が3倍〜8倍に増えたという。もし卵を食べられないのなら、アボカドを加えてもいい。そうすればカロテノイドのような脂溶性の栄養素のすばらしい恩恵にあずかり、脳の働きがグンとよくなるだろう。