腸と脳にはどんな関係があるのか。京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授は「腸と脳は大きく関係しており、精神状態の安定にも関わっている。最新の研究では、食べたいものは脳だけではなく腸内細菌の影響を受けていると指摘されており、腸と脳は独特の進化を遂げた可能性がある」という――。
※本稿は、内藤裕二『すごい腸とざんねんな脳』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
「幸せホルモン」は腸で作られている
幸福度に関する調査では、その人がどのような考え方を抱いているかということが重要視されます。しかし、その考え方に腸が影響を与えているとしたら、あなたはどのように思いますか?
腸で作られるさまざまな神経伝達物質の中で代表なものがセロトニンです。この神経伝達物質は、脳の中でリラックス、安心感、幸福感などをもたらし、別名「幸せホルモン」とも呼ばれています。セロトニンの役割は「他の神経伝達物質の調整」です。
脳には、喜びや快楽を感じさせる「ドパミン」や恐怖や驚きを感じたときに分泌される「ノルアドレナリン」、興奮や運動に働く「アセチルコリン」などの神経伝達物質が存在し、それぞれが適量ずつ働くことで体のバランスを保っています。
その神経伝達物質の量をコントロールしながら心を落ち着かせ、精神を安定させるのがセロトニンの働きです。ドパミンやノルアドレナリンなど、私たちの心の安定ややる気に関係している神経伝達物質は他にもいろいろとありますが、このうちセロトニンの濃度の影響が9割を占めていることが知られています。つまり、セロトニンの濃度が低ければ、心の安定が保てなくなったり、やる気がうまく出なくなったりするのです。