山上徹也容疑者も母親を根本的に否定できなかった
【斎藤】山上徹也容疑者は自分を虐待し、ひどい目に遭わせたのは母親だったのに、彼の殺意は母に向かわず、教祖や、旧統一教会を支持した安倍元総理に向かったわけですよね。母は恨めなかったというか、その存在を根本からは否定できなかった。そういった場合の母に対する思いと、もう少し自己愛的な母の、自己愛に従わなかったことによる恨みは、かなり質的に違う気もするんですけれど、何かお感じのことないですか、それについて。
【横道】そうですね。山上容疑者が統一教会の個々の教義とどう向きあっていたのか、情報がほとんど出ていないので、気になります。私はエホバの証人の教義に自分がかなり侵食された気がするので、その教義の最大の媒介者だった母の侵食度は高かったんですよね。母の父、私の母方の祖父は、母が高校生のときに急に事故で亡くなりました。
母はいいところのお嬢さんでしたが、兄が急速に遺産を食いつぶしたために、高校を中退して大阪に働きに出て、弟を大学に行かせるために仕送りをしたそうです。20歳で結婚しましたが、不妊にも悩んだ。身ごもっても流産という経験を経て、7年目に待望の子として生まれてきたのが私だったわけです。
母は自分が祖父から受けた圧力を子どもに向けた
【横道】母の私に対する態度はめちゃくちゃでした。待望の第一子ゆえ、長女、つまり同性の子のように感情移入された上、母はかつて自分を罰していた父親を肯定して美化し、内面化していたので、祖父の母への態度を再演するかのように、私を罰することに熱心でした。しかもその背景には唯一の絶対神を信じる父権主義的な教団がある。私が受けた圧力はかなり大きかったと思います。