体罰のムチは悪質だと認知されてきたが…
【斎藤】「2世問題」と聞くとエホバの証人という印象が、私のなかにずっとあって、これは何なんでしょう。虐待率の高さなんでしょうか。
【横道】そうですね。エホバの証人の信者は約20万人だったかな。でもバプテスマ(洗礼の儀式)を受ける前の「研究生」を入れると、50万人ぐらいだと聞いたことがあります。
【斎藤】そんなにいるんですか。カトリック教会並みじゃないですか。
【横道】創価学会は、公称800万世帯ですよね。実数はもっと少ないはずと言っている人もいますが。でも宗教2世界隈の様子を見ていても、創価学会で2世問題を唱えている、つまり宗教被害を受けたと言っている人が、エホバの証人の2世の16倍もいるとは思えないんです。宗教被害を訴えるエホバの証人2世の数は、同じように訴える創価学会2世よりも多いと思うので、エホバの証人が2世問題を生み出しやすい宗教である可能性はあると思います。かつては一応受けいれられていた「ムチ」の問題が、日本社会で子どもの人権への配慮が高まったことで、非常に悪質だったと可視化されたことは、ひとつの理由でしょう。
子どもたちは親に従順でなければならない
【斎藤】どうしても不思議なのは、オウム真理教もそうですし、私がじかに見学したヤマギシズムのヤマギシ会もそうだったんですけど、子どもの扱いが非常に雑と言うか、配慮がないですね。カルト一般に、子どもを人間扱いしていない印象があります。そりや2世問題も起こるわという。
【横道】母はよく私たち子どもに「従順!」と叫んで、その言葉が出ると、こちらが態度を改めないと「ムチ」になるという展開でした。親たちは、「私たちの父」エホバを信仰対象として敬っていますから、神に対して「神の子羊のように従順」なんです。それと同様に、子どもたちも自分の親に対して従順でなければいけないという世界観です。エホバの前では人間は無なので、そのモデルに従い、親の前で子どもの人権は軽視されがちです。
【斎藤】特に新興宗教系の場合、母親だけが信者で父親は信者じゃない、あるいは反対しているというケースは、けっこう多いように思うんですが、そういった場合でも、母親が主導権を握ってしまいがちですね、育児に関しては。