事実、フィルターは容姿への不満を生み、整形への意欲を高めているようだ。あるTikToker女性はボールド・グラマーを適用した動画の中で、「唇にリップフィラー(コラーゲン注射)を入れて……眉も本当にこういう風に(フィルターのように)したい」と真剣な表情で語った。

前述したTikToker男性のハルさんもまた、「眉に施術を受けてリップフィラーも入れよう。ルックスを変えなくては」と動画で語っている。

CNNは2021年の研究データをもとに、顔立ちを描き変える類いのソフトの使用と、美容整形手術とのあいだに、一定の相関が確認されたと報じている。

身体醜形障害や認知的不協和を引き起こすおそれがある

心理学者のウィトマー氏はインサイダーに対し、「ボールド・グラマー・フィルターはまた、間違いなく人間の自己認識に悪影響を及ぼします」と語っている。氏は「このフィルターは極端なケースでは、身体醜形障害を招くこともあり得ます」と説明する。

身体醜形障害とは、他人から見ればささいな外観上の欠陥が過度に気になり、苦痛を覚えたり社会生活が困難になったりする病気だ。

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ウィトマー氏によるとさらに、フィルター適用前後の像が異なることから、認知的不協和を引き起こすおそれもあるという。自身の中に矛盾する認識を抱え、それが不快感やストレスの源となる状態だ。

特に憂慮されるのは、多感な10代の若者への影響だ。インサイダーは、思春期の脳は外界の影響を受けやすく、フィルターによるネガティブな影響もより受けやすいと説明している。

あるTikTokerは動画の中で「自分が10代の頃はSnapchatに、犬の耳(を付けられるフィルター)があるだけだった。本当によかった」と述べ、7万件以上の賛同の「いいね」を集めた。

自分のルックスに不満を抱くようになった若者たち

ソーシャルメディアで個人が動画を撮影・投稿できるようになり、以前よりも、自分の容姿と向き合う機会はどうしても増える。それまでは気にならなかった顔立ちが、急に他人に見劣りするかのような錯覚に陥ることもあるだろう。本来は余暇の時間を楽しむためのアプリが、必要もないのにふさぎ込むきっかけを生んでしまっている。