目は大きく、血色がよくなり「まるでセレブ」になる

この美顔フィルターはどんなものなのだろうか。

CNNは動画を通じ、数名のTikTokerの実例を紹介している。

アニーさんがボールド・グラマー・フィルターを適用したところ、一切の化粧なしに部屋でくつろいでいた彼女の顔立ちは一変した。

リラックスした眠たげな目は大きく見開き、目元はアイライナーを引いたかのようにくっきりと際立っている。眉は凜々しく、唇は肉厚でつややかだ。頬はチークを入れかのように血色がよくなり、肌年齢も10歳ほど若返ったかのように見える。

このフィルターは男性にも威力を発揮する。クリスチャン・ハルさんが試すと、どちらかというと優しく愛くるしかった顔立ちは、たちまち俳優然とした引き締まったルックスに変貌を遂げた。

肌に若々しいつやが出ているほか、眉の毛量が足され、目の彫りが深くなったことで瞳に力が宿ったように感じられる。

完成度が高すぎで、自分の顔だと錯覚してしまう…

その完成度には驚かされる。適用した人物がしゃべったり、顔の前に手などが重なったりした場合でも、映像はまったく破綻しない。米インサイダーは、以前のフィルターであれば簡単に見破れたと述べたうえで、「ボールド・グラマーでは、フィルターがかかっているかどうかを判別することがほとんど不可能になっている」と指摘する。

TikTokのボールド・グラマー

TikTokは内部処理の詳細を公開していないが、ある専門家はCNNに対し、従来のフィルターと異なる技術を使っている可能性があると説明している。元画像を無理やり変形させるのではなく、膨大なデータセットの中からユーザーの顔立ちによく似た顔データを探し出し、その顔データを使って顔の部分の映像を描き直していると推察されるという。

すなわち、画面の中の人物はもはや「ちょっとおめかしした自分」などではない。世界のどこかにいる美形をベースに、AIによって自分の顔を混ぜ合わせたものだ。

どことなく元の容姿に似ており、また、自分がしゃべり顔を動かす動作にリアルに追随するため、いつしかそれが自分自身の本当のルックスであるかのように錯覚してしまう。

そして、これこそが最大の問題だ。

「このフィルターは怖い」と語る女性投稿者も

ある女性TikTokerは顔を手で触りながら、「見て、これが問題」と視聴者に呼びかける。顔をいくらベタベタと触っても、フィルター処理の輪郭が不自然にゆがんだりする気配はまったくない。「フィルターだなんて気付くことすら、もうできないでしょう」。

別の女性TikTokerは、真顔でカメラに語りかける。「このフィルターは怖い。ディストピアかというくらいに」。