過酷な研修医時代をサバイブできたのは、100パーセント周囲のおかげ。身についたスキルも経験も、すべて他人からのいただきもの。自分だけで抱え込むものはひとつもない。当時も今もそんな思いがあります。

振り返ると、その後の私の道のりはいつも同じパターンです。

留学準備中も、留学中も、そして現在も、周囲の多大な協力と手助けがあったからこそ進んでこられました。

「なんでも同時並行でやりましょう!」というと、たったひとりで、たくましく道を切り開いてきたかのように聞こえるかもしれませんが、実際は多くの人を頼り、力を借りてきたのです。

同時並行、それはもしかすると不器用で要領の悪い私だからこその方法だったのかもしれません。

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「or」ではなく「and」で考える

「子育てしながらハーバード留学なんてよくできましたね。大変だったでしょう?」とよく聞かれます。

そんなとき、私は決まってこういいます。

「子育てと留学がセットになっていたからこそできたのですよ!」と。

先に、「3人目が欲しいタイミング」と「留学をしたい」という時期がたまたま重なったと書きましたが、三女の妊娠・出産と留学のタイミングが一緒になったのは、実は「狙い」でもありました。

留学を実現させようという決意は固まりましたが、仮に留学の切符を手に入れたとして、そのときに職場の上司に「留学してきます」とうまくいえるかどうか、そして上司がそれをすんなり受け入れてくれるかどうかを考えると、両方ともうまくいく自信がありませんでした。

いずれ留学したいという胸の内をさりげなく上司に伝えたこともあったのですが、当時の上司は、海外留学より日本でもっと経験を積むべきという考えでした。

また、産婦人科医不足が叫ばれるなかで、同僚の医師たちは毎日ギリギリのところまで働いています。それを承知で「留学してきます」というのは、あまりに自分勝手な行動のように思えました。しかし留学したいという決意は変わらない……。

そこで私が考えたのが、産休・育休を利用することでした。妊産婦は、産前産後に原則として最大で計14週間の休暇をとる権利が法律で認められています。

また原則として生後1年までは育児休暇をとることも認められています。この産前産後休暇と育児休暇中に留学できればもっともスムーズに事が進むのでは、と考えたのです。

そしてありがたいことに、運よく三女を授かりました。

受験の準備は職場には内緒で進めていましたが、ハーバードから合格通知書が届いた翌日、それを手に、上司に産休・育休取得のお願いと同時に留学したい旨を報告しました。すると上司は、「吉田先生には負けました」とニコリ。温かく留学を認めてくれたのです。

当初は育児休暇中に卒業に必要な単位を取得して、帰ってきたら復職させてもらいたいと考えていましたが、いつ戻ってくるかわからないのにポジションだけ残してくれというのも無責任な話です。それで、結局は円満退職となりました。

このように、私が留学を実現できたのは、準備も含めて留学と妊娠・出産・子育てをセットにして同時に進めたから。複数のやりたいことをあえて同時にやることで、両方とも実現できたのです。