アムネスティによると事件は、2022年6月26日の夜に起きた。タリバン軍が村を訪れ、男性と家族の暮らす家を急襲。住居にロケット弾を撃ち込んだ。

この攻撃により、男性の娘で地域の医療に貢献していた22歳女性が死亡したほか、家族も重傷を負っている。12歳になる下の娘は腹部に重傷を負い、苦しんだ末に翌日息を引き取ったという。

ムラディさんは砲撃で左脚を負傷し、地元の長老の勧めを受けてタリバン軍に投降した。しかしタリバンはムラディさんを家の外に引きずり出し、屋外で射殺している。アムネスティが現場の写真を解析したところ、銃弾は胸部と額を貫いていた。

痛みを与え、苦しませてから殺害する

ほか、氏の甥に当たる人物など親戚が拘束され、2人が処刑された。甥については両手を後ろ手に縛られ、ひざまづいた体勢で、頭部に少なくとも1発の弾丸を受けて絶命したという。遺体は家から50メートルほど離れた岩場に棄てられていた。

タリバンはこの襲撃について、反政府勢力に的を絞った「標的型作戦」だと主張している。作戦により、計7人のレジスタンスが死亡したと発表した。

胸ポケットにタリバン旗を挿しているタリバンのメンバー(写真=Callum Darragh/CC-Zero/Wikimedia Commons

だが、アムネスティによると、ムラディさんを含む3人が以前はレジスタンスのメンバーだったものの、直近で戦闘に参加した者はいなかったという。

ある犠牲者は、頭部や胸部など実に4カ所に銃創を負っていた。火薬の飛散状況からして、手脚は至近距離から銃弾を受けていたことが判明している。アムネスティは、「捕縛され拘束された者に対し、このように意図的に痛みを与える行為は、国際法上の犯罪である拷問に該当する」と指摘している。

旧政権の特殊部隊員だった25歳男性

ちょっとした用事で外出したきり、行方をくらます被害者もいる。インディペンデント紙は22歳女性のゾーヤさんによる証言を基に、タリバンの迫害を受けた25歳の兄・ファルハンさんの事例を報じている。家族の安全のため、名前はどちらも仮名だ。

昨年の夏、出かけてくるとの言葉を残したきり、ファルハンさんの行方は分からなくなった。ファルハンさんは旧政権で特殊部隊に務めていた。

ゾーヤさんはいやな予感がしていた。母とともに気をもんだ10日間を経て、家族の元にタリバンの戦闘員から電話が入った。重病のため、すぐに病院に向かえという内容だった。

消息を知って安堵あんどした家族を、悲報が襲った。インディペンデント紙は次のように報じている。「到着してファルハンの名前を告げた彼らだが、期待は裏切られ、一般病棟には案内されることはなかった。連れて行かれた先は、死体安置所であった」

ゾーヤさんは当時を振り返り、同紙の取材に対し、「最初は兄の遺体だとは信じられませんでした」と感情を高ぶらせる。心情的に受け入れがたかっただけでなく、拷問により変わり果てていたためだ。「本人だと確認できないほどに痛めつけられていたのです」