クリエイティブで勝負が決まる領域を選ぶ

オナホ領域を選んだ理由の1つは、「クリエイティブで勝負が決まりやすい領域なのに、コンセプト力で参入できる余地があったから」です。

つまり、その市場で売れている商品の強みが、「実用性がある」などの明確に言語化できるものではなく、「デザインがかっこいい」「なんとなく好き」などのクリエイティブに起因しているものということです。

写真=iStock.com/efks
※写真はイメージです

消費者の五感で「なんとなくいいな」と漠然と売れる市場に、明確な「買う理由」を持つコンセプト力のある商品を投下することで、勝率が上がります。

まずはAmazonで「オナホ」を検索しました。

すると、二次元の女の子のアニメパッケージがずらりと並ぶ。

中には「明らかに中国の業者が売っているな」という、無理矢理日本語訳したかのような、よくわからない中華製商品も売っていました。

これを買うのはめちゃくちゃ勇気がいるでしょ。

でもそんなよくわからない中華製商品が人気ランキング上位。

その時点で、まだ誰も参入していない領域の予感がしました。

神山理子『女子大生、オナホを売る。』(実業之日本社)

明確に商品の特徴を謳っているものはほとんどありません。

とにかくいろんなテイストのアニメイラストの女の子が陳列されています。

その様子は、まさに風俗店のパネル写真のよう。

カオスな検索結果です。

「違いがわからない。みんなは、この中で何を基準に選んで購入しているの?」

ドラッグストアで販売される化粧品のテスターとは違って、「オナホを試してから買う」なんてことはできません(あったら面白い。「オナホ穴兄弟」が店頭で爆誕しますね)。

そこで「オナホを使っている」という男友達に片っ端から電話をしてみることにしました。

「オナホ、どこで買ってるの?」
「Amazonで適当に買ってる」
「検索したら、似たようなものがいっぱい出てこない? どうやって選んでるの?」
「パケ買い。好みのイラストのパッケージを選んで、なんとなく買うよ」

「パッケージで買うこと」、通称パケ買い。

オナホは、実用性ではなく、クリエイティブで勝負が決まる市場だったのです。