中国の企業miHoYo(ミホヨ)が開発したスマホゲーム『原神 Genshin』が日本で大ヒットしている。エンタメ社会学者の中山淳雄さんは「魅力的なキャラクターが勝因だ。これまで中国発の萌えキャラはヒットしないとされていたが、オタク層に深く刺さった」という――。

たった6カ月で1000億円超を売り上げた『原神』

原神』は中国miHoYo(ミホヨ)が開発したスマホゲームで、PC・プレイステーションにも同時展開されているオープンワールド形式のゲームである。

2020年9月にリリースされ、「400名が3年半かけて作った開発費100億円のコストが2週間で回収された」と携帯向けゲームとしては前代未聞の数字に、業界でも驚きを隠せないレベルであった。

だがそこからの快進撃はさらに想像を上回る。6カ月で売上10億ドル(約1084億円)到達は、『クラッシュ・ロワイヤル』(11カ月)や『ポケモン GO』(9カ月)といった過去のスマホゲームトップ作を抜いて史上最速の記録となる。

※円ドルの為替レートは、当時のものを使用しています。以下同

画像=『原神』オフィシャルページより
画像=『原神』オフィシャルページより

同時に毎年700名超もの開発人員がはりつき、運営費として毎年220億円をかけ続けており、その天文学的な数字には眩暈めまいをおぼえる。

あっという間に「ゼルダ」を超えた

リリース初期は任天堂『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(BotW)』のパクリとも言われていた(影響を受けてつくったことはmiHoYo自身が公言している)。

そもそも1986年以来累計18作品になるゼルダシリーズの累計販売本数8000万本強と比較しても、原神はすでに1億3000万ダウンロード、現在も毎月500万人近くがダウンロードを続け、その世界に触れるユーザー数はゼルダを優に超えている。

絶好調のニンテンドースイッチ景気に乗って、BotWが全世界2900万本・想定10億ドル超の売り上げも、すでに原神が「毎月」2000万人がプレーし「毎月」100億円を売り上げ、累計40億ドル(約5280億円)に到達していることを考えると、もはや本家を食ってしまった格好になる。

40年近くヒットを量産し続け、世界のゲーム業界を創り上げてきたに等しい任天堂の、マリオやポケモンに次ぐ人気シリーズのゼルダが、リリースから3年足らずの新興キャラクターに食われているという「事件」の大きさは分かってもらえるだろうか?

【図表】モバイルゲーム世界トップ2社の売上推移
出典=各社IRより著者作成