設立から5年で年商100億円規模に

miHoYoは決して中国のぽっと出の新興会社、ではない。

もともとiPhoneとAndroidのスマホアプリの形式が主流となって最初に「世界的なモバイルゲーム企業」としてデビューを飾ったのは2010年設立のフィンランドSupercell(スーパーセル)だった。

クラッシュ・オブ・クラン』『クラッシュ・ロワイヤル』と良質なゲームを作り続け、2013年にソフトバンクが15億ドル(約1515億円)で51%の株式取得。その後、追加取得し、株式を2016年に中国のTencen(テンセント)に2倍強の価格(約7700億円)で転売されて以来、こちらも中国企業傘下である(ちなみにSupercellの最初のマルチプレイヤーオンライン作品が『Gunshine.net』というタイトルである)。

設立5年で20億ドル(約2400億円)超えをしたSupercellに比べるとmiHoYoの成長はもっと地道なものだった。

2012年設立後『崩壊学園』で年3200万ドル(約28億円)の小ヒット、2015年『崩壊学園2』と続けて同シリーズを改良し続け、3度目の正直となる2017年『崩壊3rd』は日本でもヒットチャートに入る秀作で、会社としても年商100億円規模に成長する。

この『崩壊3rd』で蓄えた地力を使って3年半にわたって開発を続け、同社6作目となったのが『原神』であり、miHoYoの売り上げはここで15億ドル(約1590億円)、SuperCellに並ぶ開発会社となる。

「中国のゲームは中国でしか売れない」はずだった

絵に描いたようなサクセスストーリーだが、成功の保証がない2018~19年に、しかもレッドオーシャンで業界は成熟の極みと言われたこの時代に、100億円もかけた案件(かかってしまったといったほうが正しいだろうが)に全精力を傾けた胆力は、驚嘆に値する。

実は1作品で売り上げ10億ドル超えのスマホゲーム会社というのはSupercellやmiHoYo以外にも幾つもあった。

日本では『パズル&ドラゴンズ』のガンホー・オンライン・エンターテイメント、『モンスターストライク』のミクシィ、『Fate/Grand Order(FGO)』のソニーグループのアニプレックスなどなど。

だがこれらの作品はあくまで「母国のみで売れている」(FGOはアニメの力もあって海外比率2割まで行ったが)ものでしかなかった。

そもそも過去5年強、世界スマホゲームの売り上げトップはTencentの『王者荣耀(Honor of Kings)』(2015年リリース)だった。

だが9割以上が中国での売り上げとなる典型的なドメスティック型大ヒットゲームとなる同作を代表に、「中国のゲームは中国でしか売れない」は前述の「日本のゲームが日本でしか売れない」のとまったく同じ通説でもあった。

『原神』がそれを覆した。

『原神』の市場は中国(30%)、日本(27%)、米国(19%)とむしろ海外比率が7割にも及び、全世界で売れている中国発ゲームなのだ。

「海外で売れるヒット作」は世界一のゲーム市場規模を誇る中国でも悲願だった。それはなぜだろうか?