日本のオタクが飛びついたワケ

『原神』は母国中国に次いで日本で受け入れられている。

その象徴がイラストや漫画を中心にしたSNS「pixiv(ピクシブ)での投稿作品数推移」である。

ファンの熱量を示す材料として、コミケ同様にpixiv投稿数は非常に有用である。TwitterのフォローやYouTubeの視聴とはワケが違う。皆が数時間~数日かけて好きなキャラのイラストを描きあげるのだ。

pixivは元来ニコニコ動画と相性がよく、人気ランキングでいうと“ニコ動御三家”と言われた『アイドルマスター』『初音ミク』『東方Project』がずっと君臨していた。

特に東方は2008年から長きにわたって投稿トップ作品であり、『鬼滅の刃』でも『ポケモン』ですら抜けなかった。それを、2021~22年にわたって凌駕したのが『原神』である

ここ5年ほどでpixivにおける海外ユーザーが増えており、すでに日本語比率が5割まできているというユーザー層の拡大もあるが、それを加味しても明らかに中国ゲームの勢いが日本国内でも強まっている。

中国の萌えキャラにはオタクは飛びつかない。これはかつて“定説”であった。

美少女の描き方やキャラクターづけは、ここ数十年アニメとゲームとマンガの歴史的な蓄積のある日本でしか生まれないお家芸とも言われた。だが、出自を問わず良いものには飛びつく若者層からK-POPや韓国ドラマ同様に、『原神』のキャラクターへの人気に火が付き、グッズも多く売れるようになっている

【図表】「pixiv」投稿作品数推移
出典=「pixiv年間(β)」「pixiv 年間投稿タグランキング」などから著者作成

日本市場における勝因

ゲーム性が当たったという点ももちろんある。

そもそも『Fortnite』から『PUBG』まで2017年~19年あたりは「バトルロワイヤル」と言われる多人数対戦が世界を席巻してきた。オンラインかつオープンワールドな空間で、自分なりのプレーやクリエイティブを試す作品は『Minecraft(マインクラフト)』や『ROBLOX(ロブロックス)』など現在の世界ヒット作では欠かせない要素である。

通信速度・通信料金・高性能デバイス、そしてそれをフルに活用したゲームプレー。インフラ(下部構造)の普及に連動した上部構造としてのソフトとして、オープンワールドジャンルは欧米で始まり、アジアにもPCベースで浸透していたが、それがモバイル端末でこの深度で実現した事例は『原神』の登場までなかった。

だがそれ以上に日本市場における勝因は、やはりキャラにあると言わざるをえない。

オープンワールドにつきまとってきた「洋ゲー」と言われる世界観・キャラの違和感を払拭し、日本でも十分に通用するカワイイ/カッコいいキャラクターの造形、設定から喋り方、日本人声優のアサインの仕方に至るまで、本当に日本コンテンツ大好きな中国の開発者たちが作り込んできたな! という強烈な印象をもった。