「発達性トラウマ」は複雑性PTSDの原因でもある

もう一つ、今回の診断が画期的だと感じるのは、複雑性PTSDが「発達性トラウマ」と関係があるためです。

「発達性トラウマ(Developmental Trauma)」とは、複雑性PTSDの原因となる子ども時代に負ったトラウマのことです。

子どものころに家庭や学校などで負った慢性的な(反復性)ストレスが複雑性PTSDの原因であることがとても多いのです(もちろん、眞子さまのように成人してからのストレスも同様に複雑性PTSDにつながるトラウマの原因となります)。

写真=iStock.com/Hakase_
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主に子どもの頃に受けたストレスがトラウマに

そのため、発達性トラウマは、私たちが抱える生きづらさの原因を明らかにするものとして近年注目されています。複雑性PTSDという診断が公になされるようになったということは、あわせてその要因である発達性トラウマについても今後広く知られるきっかけとなると考えられます。

トラウマ研究の第一人者であるベッセル・ヴァン・デア・コーク(Bessel van der Kolk)は『身体はトラウマを記録する』(紀伊國屋書店)の中で、「私たちの社会は今、卜ラウマを強く意識する時代を迎えようとしている」と述べています。

これはトラウマという概念が、ただいたずらに拡大解釈され適用されていく、ということを意味しません。そうではなく、様々な研究から明らかになったことを受けて、私たちが人間らしく生きるための要件とは何か、そしてそれを破壊するものとは何かを捉え直す時代が来た、ということではないかと思います。

「トラウマ」と聞いて、あなたはどんなイメージをお持ちでしょうか?

どこか遠い世界の話? 特別な体験をした人が被る症状? 耳にしたことがあるけれど詳しくはわからない……等々、そのイメージは様々だと思いますが、いずれにしても自分とは直接には関係のないものとお感じではないでしょうか?

トラウマは、遠い世界の存在ではありません。日常の不調や悩み、生きづらさといったあなたがふだん感じている症状としても現れています。トラウマは私たちにとって、とても身近な存在なのです。