「マスク氏は損失の穴埋めにしか興味がない」

Twitterは世界で3億人以上ともいわれるアクティブユーザー数を抱えながら、ビジネスとしての収益確保に苦労してきた。米政治専門紙のヒルは、「Twitterは常に質の低いビジネスであり続けてきた」とまで指摘している。

有償サブスクリプション「Twitter Blue」で早急な黒字化を目指し、広告依存体質からの脱却を目指すマスク氏は一見、企業経営者として至極真っ当な働きをしているかにもみえる。

だが、視点を変えれば、不用意な買収発言により背負い込んでしまった「お荷物」企業の扱いに悩み、少しでも経済的損失を軽減しているにすぎない。その過程においてユーザーは混乱し、従業員は生活不安に陥っている。

Twitter社の従業員はニューヨーク・タイムズ紙に対し、雇用継続のため厳しい条件を突きつけられる従業員側の不満を代弁する形で、次のように打ち明けた。

「イーロンはTwitter買収という拘束力のある義務から逃れることに失敗し、損失を被りました。その穴埋めにしか興味がないのだということが(従業員冷遇の措置に)如実に表れています」

米空軍士官学校の士官候補生と写真を撮るイーロン・マスク氏(写真=Justin Pacheco/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

「トライアル&エラー」に振り回される従業員とユーザー

これまでTwitterは直接的な利益こそほぼ生み出して来なかったものの、将来性ある企業として一定の評価と安定性を築いてきた。そこへ突如マスク氏が現れ、買収の意向を示したり撤回したりと不安定な行動を繰り広げている。

認証バッジへの課金、Twitter Blueの月8ドルへの値上げ、そして将来的には無料ユーザーによるツイートの表示優先度を下げる意向であるなど、ユーザーへの影響も大きい。

当面のあいだは「まぬけなこと」を次々とやらかすと公言し、トライアル&エラーを繰り返す覚悟のマスク氏。テック界の寵児ともいわれる彼らしい方針だが、無計画で突飛な変更のたびに振り回される従業員とユーザーがいることもまた事実だ。

数カ月後のTwitterは果たして、「より良い場所」となっているのか、はたまた「倒産した企業」となっているのだろうか。もはや公共サービスにも近い公益性をもった巨大な議論の場の命運を、一人の男が左右しようとしている。

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